makcolli2021年10月30日読了時間: 18分濡れた二人ファーストシーンのワンカット目。 都会のマンションの全景が映し出される。その一室のバスルームで、トーテムポールのような顔をした高橋悦史は、シャワーを浴びていた。 その半透明なバスルームの扉に背中をもたれて、体育座りをしているパジャマ姿の若尾文子。...
makcolli2021年7月26日読了時間: 11分濡れた欲情 特出し21人このブログでも神代辰巳監督と、その作品に関して何度か書いたことがある。そしてこのように、神代辰巳の特性について記した記憶がある。 神代辰巳はロマンポルノの監督でありながら、作家性を前面に押し出してくる監督であると。が故に、その作風は独特であり、かなりの実験性に満ちている。...
makcolli2021年1月13日読了時間: 18分女めくら物語タイトルを見た時、キワモノではないかと思った。 本編を見始めた時、メロドラマではないかと思った。 だが最後までこの作品を見終わった時、そのどちらでもなく、かなり面白く楽しめる映画だったという感慨を抱いた。 その理由は簡単である。この映画の主演が若尾文子だからである。...
makcolli2020年10月20日読了時間: 21分恐喝こそ我が人生タイトルバックからして、歪んだファズギターの音で彩られたサイケデリックな音が溢れている。 シャワールームに現れたのは、我らが男の突撃列車・松方弘樹。だが、その松方弘樹の顔にはまだ幼さが残っている。松方さんはシャワーを浴びながら、...
makcolli2020年9月3日読了時間: 19分友情『友情』。 この作品は1975年、松竹創立80周年記念作品として作られた。だが現在、邦画史において、この作品が語られることはない。 埋もれた名作というよりも、完全に埋もれてしまった作品と言えるだろう。 だが、なぜ俺がこの『友情』を見たいと思ったかというと、主演が渥美清だか...
makcolli2020年7月22日読了時間: 6分日本人のへそATGである。日本アートシアターギルドである。 娯楽映画が好きな自分にとって、芸術性を重視するATG作品は苦手な部類に入る。しかし東映で、企画作品ばかりを撮っていた中島貞夫が、渡瀬恒彦を引き連れて低予算ながらATGで撮った『鉄砲玉の美学』のような佳作もあるから、映画の世界に...
makcolli2020年6月21日読了時間: 21分喜劇 怪談旅行「グラッチェ」と言ったのが、かのケーシー高峰であったということは、言うまでもない真実だろう。 ファーストシーン。この映画は、そのケーシーとフランキー堺との絡みで始まり、軽い笑いを取る。 フランキーは和歌山、南紀にある捕鯨で有名な町、太地にある太地駅の駅長として赴任してきた。...
makcolli2020年5月20日読了時間: 13分婦系図「湯島に散る恋」。そんな言葉は、なんとなく頭のどこかにあった。 映画『婦系図(おんなけいず)』は、同名の泉鏡花の小説を原作としたものだ。 冒頭。酉の市で賑わう神社の境内で、スリの手先である少年は男の懐中時計をすろうとしたが、逆に腕を掴まれ、家まで連れて行かれた。...
makcolli2020年5月12日読了時間: 17分猛吹雪の死闘その映画はファーストシーンから、ダイナミックな雪山の雪崩の模様から始まる。 その雪崩に巻き込まれたのが、宇津井健と三原葉子であり、宇津井の婚約者であった三原葉子は、そのまま帰らぬ人となった。 それからどれくらいの月日が経ったのだろう。...
makcolli2020年4月26日読了時間: 14分女吸血鬼食わせ者と言う言葉がある。煮ても焼いても食えないと言う言葉がある。 新東宝映画『女吸血鬼』が、まさにそれに当たる。 ドラキュラ伯爵と天草四郎と、狼男を無理やりドッキングしたこの映画は、まさに食わせ者としか言いようがない。 詳しい経緯については知らない。...
makcolli2020年1月22日読了時間: 13分月曜日のユカ邦画史上においてスタイリッシュな、つまりお洒落な映画のタイトルを挙げるとすれば、どの作品を思い浮かべるであろうか。 1964年。中平康監督、加賀まりこ主演作品『月曜日のユカ』は間違いなく、お洒落な映画を代表するものであろう。...
makcolli2019年10月22日読了時間: 12分暴力戦士腐っても石井輝男は石井輝男なのか。 1979年公開の東映映画、『暴力戦士』を観てその感を抱いた。 冒頭、神戸は六甲山で開催されたロックフェスに出演し、 「♫ああ 今 地獄のベルが鳴る」 と熱唱する石橋凌をボーカルとするA.R.Bが熱いステージを繰り広げる。...
makcolli2019年8月26日読了時間: 12分濡れた欲情 ひらけ!チューリップ俺なら某日の夜なら、確かにラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショーで、芹明香主演『濡れた欲情 ひらけ! チューリップ』を見ていたのだ。 そして奇才・神代辰巳監督が織りなす映像世界に、完全に巻き込まれていたのだ。 神代辰巳は必ずなにかしかけてくる。これまで見てきた作品においても、ワンシ...
makcolli2019年8月19日読了時間: 14分としごろ松竹とホリプロの提携作品である。 ホリプロは和田アキ子を売り出すために、日活と提携して『女番長 野良猫ロック』という奇跡的にかっこいい作品を製作したこともある。 しかし、今度の会社は松竹である。とてもヤングの心を鷲掴みにするような、クールでヒップな作品を製作できるとは思え...
makcolli2019年8月16日読了時間: 16分花嫁吸血魔「狸映画を撮れ!狐映画を撮れ!各社が気取った映画を撮っているうちに、お化け映画を撮るんだ!」 この主張は非常にクールだ。新東宝社長、大蔵貢がこう言ったかどうかは分からぬが、まさに大蔵体制における新東宝は、今で言うところのモンド映画を量産していった。...
makcolli2019年8月5日読了時間: 8分でっかいでっかい野朗北九州、若松。洞海湾を望む高台にある墓地に、ともちゃんと住職がピンキーとキラーズの「恋の季節」を歌いながら登って行くと、そこに穴が掘ってあって、そこから地下足袋を履いた足が突き出ている。 「誰じゃい!おまえは!」 するとそれは頭がボブ・ディランのように爆発し、ニッカポッカを...
makcolli2019年5月9日読了時間: 13分甘い夜の果てコンプレックスにさいなまれるスケコマシ。それが松竹映画『甘い夜の果て』における津川雅彦の役どころである。 津川はファーストシーンにて、女とドライブをしていたが、その帰路事故が発生し渋滞にはまり、なかなか車が進まない。 そこでドライブインとも言えないボロ食堂で休憩していたが、...
makcolli2019年5月8日読了時間: 16分喜劇 一発大必勝若い頃の倍賞千恵子は可愛いし、綺麗だ。 その倍賞千恵子はバスの車掌をしていたが、そこへ佐藤蛾次郎、倍賞千恵子の父を含む四人組の男たちが乗り込んできた。 彼らは当時、まだ珍しかったカラーテレビの段ボール箱を持っていたが、墓場前というバス停で降りる拍子に、段ボール箱を落とし、そ...
makcolli2019年4月25日読了時間: 5分喜劇 女は度胸森崎東が演出する渥美清は、あんなにも凶暴なのだろう。 羽田、蒲田。京浜急行。工業地帯。そこに生きる電機工場の女工。町工場の青年。 新宿や本牧ではラリラリハレハレな時代が続いていたと思われるが、京浜工業地帯の若者たちは、歌声喫茶に集まり、岡林信康の「クソクラエ節」を熱唱するこ...
makcolli2019年3月11日読了時間: 17分肉体の門鈴木清順の映画については、ひとくさりもふたくさりも書いてみたいことがある。 最初、俺は清順の映画は難解でインテリ向けのものだと思っていた。だが、食わず嫌いはいけない。そう思って清順の映画を見始めた。『春婦伝』、『東京流れ者』、『河内カルメン』、『野獣の青春』、『殺しの烙印』...