makcolli9月27日読了時間: 16分極悪坊主 飲む・打つ・買うそれは明治の初年代、東京は下町の廓の出来事だった。 我らが極悪坊主真海は、もう有り余る精力に任せて、女郎たちを次々に抱き、使い物にならなくしては、また次の女郎を抱くという〝漢〟の浪漫を体現していた。 その廓に鶴千代という女郎がいて、ヒデという男とねんごろの仲になっていた...
makcolli5月17日読了時間: 16分喜劇 日本列島震度0前田陽一。世間的には無名の映画監督かもしれない。しかし、俺はその前田陽一作品を何本も見ていく中で、ある種の感動さえ覚えることもあった。 その感動というのは、前田作品に通底している「反高度経済成長主義」のようなものから感じた。前田陽一が主に監督を手掛けていた60年代から70年...
makcolli2022年11月27日読了時間: 9分くちづけデビュー作ではなく、処女作と呼びたい。大映映画『くちづけ』(1957年公開)は、増村保造監督の処女作である。 処女作の場合、いきなり傑作が生まれるか、習作にとどまるかのどちらかであるが、この作品の場合は習作にとどまったようだ。...
makcolli2022年11月15日読了時間: 11分巨人と玩具モーレツという言葉があった。それは高度経済成長期の日本で働く、主にサラリーマンたちの標語のようなものであったが、そのサラリーマンたちは、よく言えば企業戦士、悪く言えば社畜とも呼ばれていた。 では、その企業戦士はモーレツに何と戦っていたのか。戦っている本人には案外分からなかっ...
makcolli2022年11月1日読了時間: 14分関東おんなド根性酔っている。だが、その酔いに任せて映画に関する文章を書いてみるのもいいだろう。 俺なら確かに昨日なら、シネマヴェーラ渋谷の暗がりに身を沈め、安田道代主演の『関東おんなド根性』を観ていたのだ。 やはり、映画は映画館のスクリーンを前にして観るのが一番だ。しかし、コロナ禍になって...
makcolli2022年10月27日読了時間: 14分極悪坊主 念仏三段斬り雪原の中を歩いてくる極悪坊主、真海に扮している若山富三郎。その行手には十人ぐらいのヤクザ者が待ち受けていて、一斉に真海を襲ったが、真海は仕込みの杖をひらりと抜くと、その白刃で三人を残して余裕で倒し、悠然とまた歩を進めるのであった。...
makcolli2022年9月15日読了時間: 19分女経黄金期の大映の特徴の一つとして、女優陣の層が厚いと言うことが挙げられる。ここにその女優たちを列挙してみると、京マチ子、若尾文子、山本富士子、中村玉緒、野添ひとみ、安田道代、江波杏子などの名前が浮かんでくる。 映画『女経(じょきょう)』は、そんな大映黄金期を象徴するかのような...
makcolli2022年9月8日読了時間: 16分暴力脚本・新藤兼人。監督・吉村公三郎コンピによって製作された映画は、なぜこうも面白いのだろうか。 ドラマの一つのパターンとして、序盤は見ていても、人間関係の相関がいまいちよく分からないが、終盤に向けて全体像が浮き彫りになり、クライマックスへと一気に向かっていくというものがある。...
makcolli2022年6月10日読了時間: 16分女眞珠王の復讐新東宝時代の丹波哲郎は悪役と相場が決まっていたのだろうか。 公衆電話から三信商事の悪徳専務に電話を入れる丹波。 「大丈夫ですよ。すっかり奴と瓜二つになりましたからね。あとは任せておいてください」 そう言った丹波のいでたちは、三信商事のホープと目されている宇津井健の背広に靴ま...
makcolli2022年1月20日読了時間: 14分極悪坊主 念仏人斬り旅『極悪坊主 念仏人斬り旅』は若山富三郎主演、「極悪坊主」シリーズの第三弾として製作された映画である。 このシリーズの売りは身体にゴツい刺青を入れた若山扮する飲む、打つ、買うの三拍子が揃った破戒僧真海が悪を向こうに回して大暴れをするというものである。...
makcolli2021年10月30日読了時間: 18分濡れた二人ファーストシーンのワンカット目。 都会のマンションの全景が映し出される。その一室のバスルームで、トーテムポールのような顔をした高橋悦史は、シャワーを浴びていた。 その半透明なバスルームの扉に背中をもたれて、体育座りをしているパジャマ姿の若尾文子。...
makcolli2021年7月26日読了時間: 11分濡れた欲情 特出し21人このブログでも神代辰巳監督と、その作品に関して何度か書いたことがある。そしてこのように、神代辰巳の特性について記した記憶がある。 神代辰巳はロマンポルノの監督でありながら、作家性を前面に押し出してくる監督であると。が故に、その作風は独特であり、かなりの実験性に満ちている。...
makcolli2021年1月13日読了時間: 18分女めくら物語タイトルを見た時、キワモノではないかと思った。 本編を見始めた時、メロドラマではないかと思った。 だが最後までこの作品を見終わった時、そのどちらでもなく、かなり面白く楽しめる映画だったという感慨を抱いた。 その理由は簡単である。この映画の主演が若尾文子だからである。...
makcolli2020年10月20日読了時間: 21分恐喝こそ我が人生タイトルバックからして、歪んだファズギターの音で彩られたサイケデリックな音が溢れている。 シャワールームに現れたのは、我らが男の突撃列車・松方弘樹。だが、その松方弘樹の顔にはまだ幼さが残っている。松方さんはシャワーを浴びながら、...
makcolli2020年9月3日読了時間: 19分友情『友情』。 この作品は1975年、松竹創立80周年記念作品として作られた。だが現在、邦画史において、この作品が語られることはない。 埋もれた名作というよりも、完全に埋もれてしまった作品と言えるだろう。 だが、なぜ俺がこの『友情』を見たいと思ったかというと、主演が渥美清だか...
makcolli2020年7月22日読了時間: 6分日本人のへそATGである。日本アートシアターギルドである。 娯楽映画が好きな自分にとって、芸術性を重視するATG作品は苦手な部類に入る。しかし東映で、企画作品ばかりを撮っていた中島貞夫が、渡瀬恒彦を引き連れて低予算ながらATGで撮った『鉄砲玉の美学』のような佳作もあるから、映画の世界に...
makcolli2020年5月20日読了時間: 13分婦系図「湯島に散る恋」。そんな言葉は、なんとなく頭のどこかにあった。 映画『婦系図(おんなけいず)』は、同名の泉鏡花の小説を原作としたものだ。 冒頭。酉の市で賑わう神社の境内で、スリの手先である少年は男の懐中時計をすろうとしたが、逆に腕を掴まれ、家まで連れて行かれた。...
makcolli2020年5月12日読了時間: 17分猛吹雪の死闘その映画はファーストシーンから、ダイナミックな雪山の雪崩の模様から始まる。 その雪崩に巻き込まれたのが、宇津井健と三原葉子であり、宇津井の婚約者であった三原葉子は、そのまま帰らぬ人となった。 それからどれくらいの月日が経ったのだろう。...
makcolli2020年4月26日読了時間: 14分女吸血鬼食わせ者と言う言葉がある。煮ても焼いても食えないと言う言葉がある。 新東宝映画『女吸血鬼』が、まさにそれに当たる。 ドラキュラ伯爵と天草四郎と、狼男を無理やりドッキングしたこの映画は、まさに食わせ者としか言いようがない。 詳しい経緯については知らない。...
makcolli2020年1月22日読了時間: 13分月曜日のユカ邦画史上においてスタイリッシュな、つまりお洒落な映画のタイトルを挙げるとすれば、どの作品を思い浮かべるであろうか。 1964年。中平康監督、加賀まりこ主演作品『月曜日のユカ』は間違いなく、お洒落な映画を代表するものであろう。...