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  • 執筆者の写真makcolli

極悪坊主 飲む・打つ・買う




それは明治の初年代、東京は下町の廓の出来事だった。

我らが極悪坊主真海は、もう有り余る精力に任せて、女郎たちを次々に抱き、使い物にならなくしては、また次の女郎を抱くという〝漢〟の浪漫を体現していた。

 

その廓に鶴千代という女郎がいて、ヒデという男とねんごろの仲になっていた。だが、土地でぶいぶい言わせている武総組代貸・黒川は子分たちと一緒に、廓に乗り込んできて鶴千代を出せと迫る。

部屋でちちくりあっていた鶴千代とヒデは、すぐさま押し入れに隠れた。

 

次々に部屋を開けていく黒川とその子分。だが、最後に開けた部屋がいけなかった。

 

「おい!坊主!ここに若え男と女がいなかったか!」

 

そこには正常位でバッチリ決めている真海がいた。

 

「おあいにく様だがな。こっちはお楽しみのところなんだよ。少々失礼なんじゃないのかい」

「なにおう!このクソ坊主!」

 

真海がやおら襦袢を脱ぎ捨てると、その身体にはゴツい観音様の彫り物が入っていた。ここから真海は自慢の拳法で、黒川の子分たちをのしていく。この模様がタイトルバック。

 

黒川たちを撃退した真海をヒデは、すっかり気に入ってしまった。兄貴、兄貴とおだてあげ真海をいいところに連れていくという。

着いたところは廃屋だったが、やけに規模が大きい。

 

「おい。ヒデ、なんだよ。ここは。幽霊屋敷みたいじゃねえかよ」

「そう言うなよ。これでも、元はれっきとした大名屋敷だったんだぜ」

 

そう言うと屋敷の入り口に、白木みのるが座っている。

 

「やい!乞食坊主!ここなんかお前のような者が来るところとちゃうぞ!」

「なんでえ。このガキ。生意気に大人みたいなこと抜かしやがって」

「ガキちゃうわい!これでもネズミの半吉言う立派な名前を持った大人じゃい!」

 

続いて現れたのは、この屋敷の所有者なのであるが、いまだにちょんまげを結って、周りの者たちからは殿と呼ばれている老人であった。その殿、真海を見るなり、

 

「平家の落人じゃー。出会えー。出会えー」

 

と奇声を発するのであった。

 

この行動に真海は平伏し、

 

「拙者。武蔵坊弁慶でござる」

 

と言ったが、指でクルクルパーのゼスチャーをした。

 

この屋敷は、はきだめ屋敷と周囲から呼ばれていて、現代風に言えば貧しい者たちがシェアハウスしているようなものだった。

 

ヒデはここを寝ぐらにしていたが、真海を案内したのは、屋敷の中にある丁半博打の賭場だった。そこには屋敷の住人もいて、まぼろしお銀という女がサイコロを振っていた。

立膝をした着物の裾からチラリと見える生足が、なまめかしい。

 

このまぼろしお銀役を演じている八代万智子については、ひとくさり書いてみたいことがある。やはり、それは伝説のお色気アクションドラマ「プレイガール」に出演していた八代万智子だろう。

昭和元禄、ラリラリ、ハレハレな時代に彼女たちは、突然ブラウン管の中に登場した。話と脈絡のない入浴シーン、アクションシーンでのパンチラキック。

そんなホットでクールな女たちをサブリーダーとして束ねてゆくのが八代万智子だった。

だが、この作品ではそんな八代万智子が、作品に大いに彩りを添えることになる。

 

勝ちが込んでいく真海。もうウハウハの真海。ところが急に賽の目が外れ、張っていた金を全部取られてしまう。

 

「真海さん。どうでしょうか。次はあたしとサシで勝負するというのは」

「兄貴。大丈夫だよ。ついているんだからよ」

「よし。有り金全部張ろう。あんたが足りない分はどうする」

「あたしの体で払うというのはどうです」

「よし。間違いないな」

 

 

八代万智子が、勝負と言ってぼんを振った時、真海はドスを床に突き刺した。床の下には白木みのるが潜んでいて、サイコロの目をいじくっていたのだ。

 

次のシーン。八代万智子の恍惚の表情のアップ。真海はまたしても、正常位で女体を犯しながら、生卵をどんぶりに何個も入れて、それを身体に注入し、さらに腰のグラインドを大きくするのであった。

 

「真海。はやくー。はやくー」

「そんな。はやく、はやくって焦るこたねえだろ。夜は長いんだからよ」

 

その様子を屋敷の衆は、生唾を飲み込みながら、破れた障子越しに見つめているのであった。

 

ここでおさらいをしておこう。この作品、『極悪坊主 飲む・打つ・買う』は「極悪坊主」シリーズの五作目にして、最終作、つまりFILAL EPISODEである。

真海も当初は真面目な僧侶であったが、宗派内のごたごたに巻き込まれ、もうオレやってらんねえよとドロップアウトを決め込み、刺青を施した破戒僧への道をまっしぐらに進んで行った。だが根が純な真海は、弱い者を見ると助けずにはいられなかった。

そして、真海の宗派では拳法が盛んなのであったが、この凄腕エロ坊主を演じるのが、我らが若山富三郎なのである。

 

翌朝、真海が目覚めると、そこにはもうお銀の姿はなかった。代わりに一枚の書き置きがあり、「ゆうべはどうも。財布の中はいただいたわよ。 まぼろしお銀」と書いてあり、真海が財布の中を調べると、すっからかんになっていた。

 

「ちきしょう。あのアマ」

「どうしたんです。兄貴。ははん。お銀にやられたんですね。そんなことよりどうです。ちょっと手伝ってくれませんか」

「なにを」

 

気がつくとそこは馬力運送を請け負っている神速舎という会社の入り口の土間だった。そこに立っているヒデと真海、そしてもう一人は屋敷の衆で、頭に包帯を巻き、松葉杖をついている。

 

「おう!おう!おう!こいつが神速舎の馬車に轢かれて、この通りの有様なんでえ!この落とし前どうつけてくれるんだよ!」

「兄貴。痛えよおー」

「そんなバカな。うちの馬車は人なんて轢いたことはねえぜ」

「轢いたことはねえだって!現にこうしてよ」

 

と、そこへ志村喬が現れた。

 

「親方」

「さっきから聞いていたがな。うちにはユスリタカリに払うような金はビタ一文持ってやしないんだ」

真海。

「こっちもガキの使いで来ているんじゃねえんだ。払うもの払ってもらおうじゃねえか」

 

そこへ一人の女が入ってくる。

 

「あら。ヒデちゃんじゃないの。どうしたの。こんなところで」

「な、なにをって。ちょっと親方さんに話があってな。なあ」

「あ。う、うん」

「俺、用事を思い出したから帰るわ」

 

脱兎のごとく店からいなくなるヒデと屋敷の衆。女はヒデの姉であった。親方に土下座する真海。

それは隅田川だったのだろうか。川べりを歩く真海と親方。

 

「本当にさっきはすいませんでした」

「いや。なに。わたしもお前さんに凄まれた時には、体が震え上がったよ」

「そんな。それより親方には、子供さんはいないんですか」

「いた。五年前に勘当してしまったがな」

「そうなんですかい。こりゃ余計なことを聞いちまったなあ」

「いいんだよ」

 

その夜、真海は荒れに荒れた。自分を利用したヒデに対する怒りの感情が爆発した。

夜の暗がりの路地裏にヒデを引き摺り込む真海。

 

「この野郎!よくも俺の顔に泥塗ってくれたな!」

「兄貴!許してくれよ!」

 

その言葉も虚しく、真海はもう死んじゃうよ、と言わんばかりにヒデをボコボコにした。すでに抵抗力をなくしているヒデに、さらに蹴りを入れた。

そこに姉がやってきて、ヒデをかばった。

 

「やめてください!これでも一人だけの身内なんです!」

 

その言葉を聞いて、やっと真海の殴る蹴るは止まった。

 

政府の陸運局長、渡辺文雄の屋敷に呼び出された志村喬。そこには鉄板的悪役と言ったらこの人、安部徹も同席しており、この安部徹こそ武総組の親分なのであった。

 

「輪島(志村喬のこと)の。そう難しい話じゃねえんだよ。これからは陸運輸送も、海運輸送も手を合わせて、合理的にやって行かなきゃなんねえ。それでこの川島(渡辺文雄のこと)さんが力添えしてくれるっておっしゃっているんだ。なに。あんたのやることは簡単なんだよ。陸運輸送に必要な鑑札を、ちょっと俺に貸してくれりゃあいいのさ」

 

だが、これは志村喬を陥れる策略だった。別の日、またしても渡辺文雄と安部徹は、謀議を図ったが、そこには警察署長、遠藤辰雄もいた。

この遠藤警察署長が、すごくカリカチュアライズされていて、素晴らしい。

 

渡辺文雄。

「で、荷物の集積地はどこにするのかね」

 

安部徹。

「例のはきだめ屋敷ですよ。あそこなら川に面しているんで、海からも荷物を運びやすいし、なにより住んでいるのは、虫けら同然の奴らばかりだ」

 

渡辺文雄。

「しかし、奴らを追い出すにはどうするのかね」

 

安部徹。

「署長。頼みましたよ」

 

遠藤辰雄

「グッフフフフ」

 

こうして悪の枢軸が結成された。

 

その頃、ヒデは鶴千代を廓から足抜けさせ、はきだめ屋敷の真海に泣きついていた。

 

「兄貴ー。かくまってくれよー。奴らに見つかったら、どんな目に遭うか分かんねえんだよー」

 

それでも真海のヒデに対する怒りは、まだ収まらないようで、

 

「馬鹿野郎!お前らなんか簀巻きにされて、川に放り込まれりゃいいんだ!そうでなきゃ心中でもしろ!」

 

と言ったのだが、この時、真海の頭に妙案が浮かんだのであった。

 

程なくして、はきだめ屋敷にやってくる黒川と子分たち。真海は二つの棺を前に、お経をあげている。そこには泣き濡れる屋敷の衆たちもいた。

 

「なんなんでえ!こりゃ!」

「見りゃ分かるだろ。あんまりお前さんがアコギな真似をするから、ヒデと鶴千代は心中しちまったのさ」

「けっ!馬鹿馬鹿しい!お前ら帰るぞ!」

「おっと。なにか忘れちゃいねえか」

「なにを」

「香典だよ。香典はケチっちゃいけねえぜ」

 

そう言うと真海は黒川に財布ごと置いて行かさせた。帰っていく黒川たち。

と、次の瞬間、棺の中からヒデと鶴千代が飛び出してきて、皆は狂喜乱舞した。もう騒ぎに騒いだ。そこへヒデの姉がやってきて、ヒデの頬を叩いた。以後、ヒデは志村喬のもとで真面目に働くということを誓った。

 

ヒデの姉は小料理屋を開いていた。その店に一人の男がふらりと入ってきた。

 

「龍太郎さん・・・」

 

その待田京介演じるところの龍太郎こそ、志村喬が五年前に勘当した息子だった。ヒデの姉と龍太郎はいい仲だったのだ。

龍太郎が帰って来るまでに、安部徹はなかなか鑑札を渡そうとしない志村喬にごうを煮やして、黒川以下子分たちを神速舎に殴りまこせたり、はきだめ屋敷に殴り込ませたりしていたが、ことごとく真海によって粉砕されていた。

ことの顛末を姉は龍太郎に話したのであった。

 

その話を聞いて頭にきちゃった龍太郎は、武総組に乗り込んだが、遠藤辰雄以下の警察によって逮捕され、勾留の身となってしまった。

 

署長室で相対している遠藤辰雄と志村喬。

 

「分かるだろう。陸運局から鑑札を預かっている君のところに、あのような前科者がいると言うのはけしからんことだ」

「はい」

「これはお上の決めたことなんだよ。鑑札を渡しなさい」

 

志村喬は鑑札を返上するしかなかった。

代わりに龍太郎は保釈された。警察署から出てくる彼を、真海と姉は待っていた。そのすぐそばに志村喬がいて、姉が声をかけた。

 

「五年ぶりに帰ってきた龍太郎さんに、かける言葉はないんですか」

「この寒空の下、着流し一枚でいる男がいる。これをその男に渡してやってくれ」

 

そう言うと志村喬は、着ていたコートを姉に預けた。

 

もう真海が邪魔で邪魔で仕方がない安部徹は、黒川たちに闇討ちを仕掛けさせた。だが、拳法の使いである真海は、その上、持っている金剛杖が仕込みになっていて、三下ヤクザどもをバッタバッタと切って捨てていく。

 

さらに近くのお堂から鞭がヒュと伸びてきて、子分の首に巻きつき、そのまま彼を締め殺した。

 

「了達・・・」

 

お堂から姿を現したのは、真海を一生のライバルとして狙う盲目の僧了達であり、それを演じるのは我らが菅原文太なのであった。

了達は第一作目にて真海に目潰しを喰らい盲目となり、以後その恨みを晴らす為にシリーズごとに登場してくる重要キャラである。

 

「な、なんだ!てめえは!」

「このドメクラ!」

「ドメクラと言ったな。では、そのドメクラが、どれほど恐ろしいか教えてやろう」

 

真海の仕込みの杖。そして了達の鞭。このダブルパワーによって、武総組の子分たちは完膚なきまでにやられていった。

 

了達。

「真海。決着をつけるぞ」

 

だが、そこにはきだめ屋敷の衆がやってきて言った。

 

「なんだ!このバケモン!」

「お前なんかに真海さんをやられてたまるか!」

 

この頃にはすっかり皆の支持を集めている真海なのであった。了達。

「真海。決着はまたつけよう。待っているぞ」そんな真海がふらりと街を歩いていると、見覚えのある腰付きが目の中に飛び込んできた。

 

「ありゃ。お銀だぜ」

 

そのまま真海がお銀をつけていくと、小粋といった感じの家に入って行った。そのまま真海はその家に忍び込み、お銀が台所で料理をしながら、ダイヤモンドを買ってだのなんだの言うと、声色を変えて、「いいよ」とか適当に言い。「二階で待っているよ」と言って、そこでお銀を待ち受けた。

 

お銀が二階に上がって行くと、そこには見たことのある坊主頭の男が座っていた。

 

「真海!」

「グッフフフフ。この前のお礼をたっぷりさせてもらうぜ」

 

そう言うと、真海はお銀に抱きついた。

 

「やめるんだよ!このクソ坊主!」

「嫌よ。嫌よも好きのうちってか」

 

真海はお銀の股を開いて、そこを覗き込みながら、

 

「立派な林があるでよ」

 

と言ったが、この台詞には爆笑してしまった。

キセルをくわえながら、またしても正常位で女体を味わう真海。恍惚の表情を浮かべるお銀。

 

「やっばり、あんたのじゃなきゃダメだよー」

「グフフ。そうだろ。また極楽往生させてやるよ」

「帰ったぞー」

 

そこに見知らぬ男の声が聞こえてきたから、真海はたまげてしまった。

 

「ありゃ。誰なんだい」

「嫌な男なんだよ。賭場でサツにパクられちまってさ。それ以来、アタイは警察署長の妾になっているんだよ」

「警察署長!」

 

慌てて押し入れに隠れる真海。そこへ遠藤辰雄が上がってくる。

 

「もう。お銀。遅くなってごめんねー」

「いいのよ。それよりご飯にしましょうよ」

「ご飯なんかいいからさー。いいことしようよー」

「それはご飯を食べてからでしょ。もう。言うこと聞かないとメッしますよ。先に行っていて」

「はい。可愛い小鳩ちゃん」

 

遠藤辰雄が階下に降りたうちに、真海とお銀は二階の窓から夜の中に遁走を決め込んだ。しかしである。このシーンにおける遠藤辰雄の漫画チックな演技は素晴らしい。結局、男はいつまで経っても甘えん坊ということを体現している。

そして真海の有り余る精力を受け取るお銀、八代万智子の演技もいい。

「極悪坊主」シリーズも回を重ねるごとに、パワーダウンしてきた感じがあった。それはとりもなおそう、セックスパワーのダウンと言い換えてもいい。

その起死回生を狙ったのか。八代万智子の起用は、真海、いや若山富三郎の性豪ぶりを再び世に示すのに成功した。

 

そこは鹿鳴館だったのだろうか。西洋式に正装した男女が、ワルツのテンポに合わせて踊っている。そこにドレスアップしたお銀と、カツラを被ってつけ髭をつけ、軍服を着た真海が入ってくる。

お銀は渡辺文雄に目をつけワルツを踊ると、バルコニーに誘った。

 

「わたくし、陸軍中将の娘ですの」

「り、陸軍中将閣下の!」

「一度、あなたのお宅へ遊びに行きたいと思っていますのよ」

「は、はい」

 

これは真海が作戦を練った芝居であったのだが、真海はお銀と共に部下として、龍太郎とヒデを渡辺文雄の屋敷に連れて行った。

 

「どうだね。君はこの銀子を気に入ったかね」

「は、はい」

「場合によってはだね。正式に交際を認めないでもないが、今陸軍の中では君に対するよくない噂が立っていてね」

「と言いますと」

「君が一部の悪徳な業者と結託をして、神速舎という陸運業舎の鑑札を取り上げてしまったという話でな。君も将来がある身だ。そこのところは、よく考えたほうがいいんではないかな」

「君。わたしの手文庫を持ってきなさい」

 

渡辺文雄は執事のような男に、手文庫を持ってこさせると、その中から志村喬が持っていた鑑札を取り出し、真海に手渡した。

 

真海。

「これを神速舎に持って行きなさい」

部下に化けていた龍太郎は鑑札を受け取ると、そのまま部屋から出ていった。

 

真海とお銀が屋敷から出て行こうと、玄関にくると、そこに間が悪く安部徹と遠藤辰雄が現れた。

 

「お、お銀!こいつはこんな格好をしていますがね!まぼろしお銀と言う名の売女なんですよ!」

「すると。てめえは真海だな!」

「ふっ。今更ジタバタしても始まらねえや。そうよ。オレは真海様よ」

 

カツラを取って、つけ髭も外し、その場に腰を下ろす真海。その真海に銃口を向ける安部徹。

 

「もういい。この人は陸軍中将閣下だ」

「しかし・・・」

 

そのまま真海とお銀は屋敷をあとにした。ここには渡辺文雄のもうこれ以上、危ない橋は渡りたくないという官僚としての打算があった。

頭にきちゃったのは安部徹であった。もう強引にMY WAYとばかりに、力づくで邪魔者たちを潰しにかかった。

 

はきだめ屋敷を子分たちに襲撃させ爆破。瓦礫の下で殿は死んだ。人力車に乗っている志村喬は凶弾に倒れた。さらに真海に向けては、殺し屋を放った。

 

昼の街路。ちょいといい女が真海を誘ってくる。すけべな真海はひょこひょこ着いて行ったが、この女が殺し屋だった。

部屋に入るなりいきなり槍を真海に向けてくる女。それでもすけべな真海は女を抱こうとする。そこに手裏剣が飛んできて真海を狙う。

その手裏剣を投げた男こそ、誰あろう川谷拓三であったが、なぜか彼は綿帽子みたいなのを頭に乗っけていた。拓三の投げた手裏剣は、女の身体に突き刺さった。

どうやら彼らはチームではなく、真海を狙うライバルのようである。拓三は真海の正拳突きにより血反吐をはいて絶命したが、代わりに中国服を着た男が現れ、真海に銃を突きつけた。

 

「飛び道具向けられちゃどうにもならねえや。好きなようにしろい」

 

真海がそう言うやいなや、あの槍の女が、

 

「この獲物はアタイのものだーっ!」

 

と言って、中国服の男に襲い掛かり、そのまま銃で打たれて絶命。その隙に真海は男に目潰しを喰らわしピンチを脱した。

 

志村喬の屋敷では神速舎の一同、そしてビデの姉、真海、龍太郎が見守る中、親方である志村喬が布団に寝ていた。

 

「親父!」

「龍太郎。神速舎のことを。あとのことを頼んだぞ」

 

事切れる志村喬。何かを決したかのように屋敷から出て行こうとする龍太郎。

 

真海。

「龍太郎さん。そいつはいけませんや。それじゃあ親方の言ったことを裏切ることになる。あんたはこれから神速舎を、になっていく人なんだ」

 

真海は屋敷から街路に出た。そこで待っていたお銀。真海に抱きついて。

 

「お前さん。死んじゃいやだよ。生きて帰ってきてね」

「ああ」

 

最後まで八代万智子はいい仕事をした。

ここからはもう、WAKAYAMA KILL KILL TIME。

 




武総組に乗り込んだ真海は子分たちを、仕込みの杖でばっさばっさと切ってゆく。ここで十分にウォームアップしたところで、代貸しの黒川も血祭りにあげた。

残るところは組長の安部徹だけとなった。

 

「てめえだけは楽には死なさせねえ」

 

突き、蹴りをその身体に叩き込む真海。

 

気づくと真海は砂丘を歩いていた。その砂丘には了達が待ち構えていた。

 

「きたか。真海」

 

ついに二人の死闘に決着がつけられる時がやってきた。二人とも武器は使わず素手のみの勝負に挑む。互いに突き、蹴りを身体にめり込まさせる。

了達の手刀が真海の脳天を直撃し、血飛沫が上がる。真海の肘打ちが了達の腹に食い込み、その口から胃液を吐く了達。砂漠を転がり落ちる了達。それを追う深海。

一進一退の攻防がどれだけ続いただろうか。次第に体力をすり減らし、ふらふらになっていく二人。それでも戦おうとする二人。

真海のモンゴリアンチョップを受けて、膝から崩れ落ちる了達。

 

「立て。了達」

 

ついに了達が起き上がることはなかった。一人背を向け砂丘から遠ざかっていく真海。そこに被さるエンドマーク。

 

こうして「極悪坊主」シリーズは完了した。〝漢〟の夢を乗せて縦横無尽に活躍した真海。そして彼を執拗に追ってくる了達。

エロと笑いと涙と怒りとアクションと。それを体現した若山富三郎の演技力と、身体能力の高さに敬服すべきだろう。

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