鈴木則文といえば「トラック野郎」シリーズに代表されるような、大衆娯楽路線を得意とする映画監督であり、そこには熱く生きる人間たちのドラマとちょっぴりの権力批判、そしてなによりエロとギャグと、野糞とアクションが同時に展開されるという邦画における一大山脈であると言っても過言ではない存在である。
だがその山脈には影の部分が存在する。
多岐川裕美のデビュー作『聖獣学園』は、修道院のような全寮制の女子校の中で、背徳的世界が展開されるのであるが、学院理事の渡辺文男は実は被爆者で、この世には神などいないと言い切る。
またエロ時代劇である『徳川セックス禁止令 色情大名』は、実に腹を抱えて笑える作品であるが、殿(東映の絶倫帝王・名和宏)を陥落させる異国女、サンドラ・ジュリアンの主人である、またまた商人のところの渡辺文男は、今度は転びバテレンで、かつてパライーゾに理想を見たが、そんなものは空想に過ぎず、金こそがこの世を動かすことができるすべてであると断言する。
サンドラ・ジュリアンの裸体に、スライドのように映し出させるキリスト像。
なにか鈴木則文には、背徳へのこだわりを強くうかがわせる作品がある。
某日。
シネマヴェーラ渋谷の特集「鈴木則文復活祭」において、『堕靡泥の星 美少女狩り』を観る。
この作品。学生時代に鈴木則文の世界に目覚めた自分であるが、今まで一回も見たことがなかった。それほど鈴木則文の作品としては、異色作であるし、いまだにソフト化もされていない。
そもそも製作会社が則文のホームグラウンドの東映ではなく、日活ということも珍しいし、当然当時の日活作品であるからロマンポルノということになる。
嵐の晩、爬虫類的悪役と言ったらこの人、山本昌平は絶倫帝王・名和宏の邸宅に忍び込み強盗を働いたが、同時に奴は変態性欲の持ち主でもあった。
絶倫帝王を縛り上げたニッカポッカに地下足袋、腹に腹巻巻いた労務者というか、ドカチンの山本昌平は、これ見よがしにその妻を犯していく。ラジオからは現天皇の婚約のニュースが流れている。
性欲を満たし、さらに金をかっさらったヤモリのような山本昌平は、魔界へ帰る悪魔のように闇に消えていった。
しかし今度は名和宏が変態性欲に目覚めてしまった。
妻の被虐的な姿を見てしまった名和宏は、毎晩、妻を縛り上げ犯して犯しまくった。まさに絶倫帝王の名に恥じない演技振りである。
さらに縛った妻の姿を写真に撮り、それを部屋にばらまき、なおも妻を犯しまくってゆく絶倫帝王。
妻はもうこんなことはやめてくれと懇願し、さらに自身が妊娠したことを告げるが、どうせその子供は俺の子供ではなく、あの強盗犯の子供だろと名和宏は冷たく言い放つ。
さらに生まれてきた子供が強盗犯と目つきがそっくりだということから、子供にも体罰を加え出し、またまた縛り上げた妻を種馬のごとく犯してゆく。
その背徳の世界を子供はドアの隙間から、こっそり覗いていて、この子供がこの作品の主人公となってゆく。
肉体的にも精神的にも追い詰められた妻は、仏壇の前で自分の喉元に刃物を突き刺し死んだ。
そして子供は成長し、二十歳になっていた。
海を望む庭がある邸宅。そこは主人公(仮に土門峻と呼ぶことにしよう。今、特集のビラを見たら、そう書いてあった)の幼馴染の家で、幼馴染の娘、その父親、そして土門の三人でバーベキューをしている。
口に上がるのは突然死んだ土門の父、名和宏のことだった。土門は生前、何かとお世話になっていたからと、幼馴染の父親に名和宏が残した遺産から一億円を差し渡すと言いだす。
ちなみに幼馴染は土門のことを〝お兄ちゃま〟と呼んでいる。
家に戻った土門は邸宅の中で高笑いをする。
「あの爺さん。一億円をやると言ったら目を丸くしていたぜ。親父の遺した金は全部で48億もあるんだ。それが全部、俺の自由になるんだ」
この作品。
これがあの「トラック野郎」を撮っていた監督の作品なのかと思うほど、背徳と血まみれの恐怖絵巻が繰り広げられている。
しかし、そこは基本的にエンターテイメントを重要視する鈴木則文、物語のめりはりは効いていて、ひたすら地獄絵図を描くのではなく、緩急をつけながら作品は進行してゆくし、例えば作品の前半に名和宏を死んだことにし、後半でその真相を明らかにするなど、見る者を飽きさせることがないように工夫もしている。
ちなみにその後半、名和宏はどのようにして死んだのかというと、土門と二人でクルーザーに乗って海に出て行ったが、沖合で大シケになり、その荒ぶる波の中にとき落とされ、海の藻屑と消えた。
作品の脚本は大和屋竺で日活の脚本家としては、本当に好きな人。
鈴木則文と大和屋竺のコラボレーションを見ることは、非常に贅沢だが、内容は前述の通りに背徳の極北を描き出している。
余談であるが、この作品の公開は79年で、同時期に「トラック野郎」も撮っているのだから、その両極性は凄まじい。
土門は父親の愛人であったホステスを、言葉たくみに自宅に連れてきて、そのワインの中に薬を盛っておいた。
ホステスが気づくと、そこは地下室。例えるとするなら澁澤龍彦が紹介したような中世ヨーロッパの拷問室のような地下室で、ホステスは手を鎖に繋がれ、天井から吊るされていた。
その体に雨あられのように鞭を打ち付ける土門。
「ど、どういうつもり!父親への腹いせなの?それだったら御門違いよっ!」
それでも容赦なしにホステスを責め続ける土門。
数日が経ち土門の邸宅では、幼馴染(仮にひろみと呼ぶことにしよう)の誕生パーティーが開かれていた。
集まってきた友達たち。テーブルには豪華なケーキにご馳走が並んでいる。そして流麗なピアノの音に乗せて、皆はワルツを踊る。 「僕、地下に行ってワインを取ってくるよ」
そう言うと土門は地下室に降りて行った。そしてそこには、数日食物を与えられていなかったのだろうか、衰弱した様子のホステスがやはり吊るされていた。
ピアノの音は鳴り続けている。
土門は裸になると、やにわにホステスの胸にナイフを突き立てた。
血しぶきが噴水のように上がると、ホステスは絶命し、返り血で真っ赤になった体をシャワーで洗い流す土門。彼は何事もなかったかのようにパーティーに戻り、ひろみとワルツを踊った。
ある日、土門が何気なくテレビを見ていると、そこには高校生の青年主張大会で、戦争の悲惨さと平和の尊さを主張する女子高生の姿があった。
とうとうと自己の主張を述べる女子高生。画面に映る彼女の姿。そしてその主張を聞いている土門の目つきが変わる。
土門は彼女の学校の帰り道、車で待ち伏せをしていて、高名な小説家の先生があなたの主張に感銘して、ぜひ会いたがっているとかなんとか言って、車に乗せ自身の邸宅、そして地下室に連れて行った。
女子高生を鎖に繋ぎ責め苦を味あわせる土門。
「ど、どうしてこんなことをするの!?家に、家に帰してよっ!」
土門の血は生まれながらに呪われていたのだろうか。彼が高校生の時、社会の時間でナチのホロコーストに関する授業があった。
下校時、同級生が、
「俺たちナチスの時代のユダヤ人に生まれなくてよかったなあ。問答無用で殺されちゃうんだからなあ」
と言うと土門は、
「あんなに素晴らしいことはないじゃないか。あれこそ人類史における芸術だよ」
と言い同級生をギクっとさせた。
土門は自分の部屋にナチス関連の本を集め、殺されたユダヤ人の死体を見て、オナニーすることもあった。
以来、彼は平和や道徳というものを憎み、虐殺、無差別殺人、憎悪などを愛し、しかもその中に性欲を見出すという倒錯した愛欲の持ち主となっていったのである。
そして最初は三角木馬責めなどをくわえられ、恥辱の中に涙を流していた女子高生も次第に土門に調教されていき、土門の愛奴となり、自ら鞭打ちなどの責め苦やアブノーマルなプレイを求めるようになったのである。
喫茶店で相対して座っている土門とひろみ。
「もう。最近全然お兄ちゃま、ひろみのことかまってくれないんだから」
「ごめん。ごめん。実は最近、家で小鳥を飼っていて、最近やっとなついてくれだしたんだ」
「その小鳥、可愛いの」
「ああ。可愛いさ。僕の言うことは何でも聞いてくれるんだからね」
「ひろみも今度、その小鳥さん見に行きたい」
「残念だけれど。近いうちに逃がしてあげようと思うんだ」
「ふーん」
この土門がかなりいい演技をしている。ひろみや世間の前では好青年を演じているが、実はとんでもない化け物。その化け物の顔を見せた時、狂気を一気に爆発させるのではなく、神経質的に狂うという感じなのだ。
自らが作り出した背徳の帝国の帝王。
その中ではすべてのことを完璧にやり遂げるという神経質な、ヒステリックな暴君といった感じなのである。
一方魔界に消えたかに思えた山本昌平であったが、再び白昼の世界へ現れ、下校時の女学生を草むらに連れ込み、犯して最後はその首を絞めて殺しながら、エクスタシーの頂点に達するという、変態性欲ぶりを発揮していた。
その悪の権化というか悪魔そのものである山本昌平には、また密かな楽しみがあった。
どういった経緯なのか分からないが、新聞に土門の顔写真が載っていて、それを見ながら飯場にいる他の者に、これは俺の倅だ、俺の倅だと吹聴するのだった。
「そんなコマシのセンやんに、こんな男前で大学卒の倅がいるわきゃねえだろ」
そうツッコミを入れたのは、同じく飯場仲間の三谷昇で、三谷昇は山本昌平の頭脳が壊れていると思っていた。
強姦殺人を繰り返す山本昌平を警察はマークしはじめていた。
現場百回的なベテラン刑事と、その部下がデビル山本昌平を追い始めたのだが、この二人の刑事が物語にかなり絡んでくるかと思ったけれど、そうならなかったのは少し残念だった気がする。
夜の路を疾走するどこかで見覚えのある大型トラック。
そのドライバーこそ、我らが菅原文太演じる一番星の桃次郎であり、その助手席には山本昌平が乗っている。
女のビラビラの種類を力説する山本昌平。それに聞き入っている桃さん。あまりに熱中して聞き過ぎ、ハンドルを切り損ねる桃さん。
「危ねえじゃねえかよ」
「いや。オヤジの言うことがあまりに面白くてよ。もっと続けてくれよ」
さらに女のビラビラの種類を解説するデビル山本。
「いやー。きょうはいい人乗せたなー。やっぱり人生勉強、勉強だよなー」
このシーンには爆笑してしまった。
タイトルバックに友情出演・菅原文太と出ていたので、どこで登場するのかと思っていたが、まさか「トラック野郎」を強引にぶち込んでくるとは思わなかった。青天の霹靂という感じがしたし、このシーンだけ地獄の中の一服の清涼剤とも言えるものであった。
そしてこう言ったサービス精神こそ、鈴木則文イズムであると言える。
例のごとく土門は邸宅の自室で、テレビを見ていた。
そこに映っていたのは人気絶頂の女性アイドルであったが、土門の胸中にはまたしても邪悪な観念が思い浮かぶのであった。
ステージがはけたアイドルと、そのマネージャーは楽屋口から出て行こうとしたが、そこに土門が車で乗りつけ、またしても言葉たくみに二人を誘拐し、自分の地下帝国に閉じ込めたのであった。
別々の檻の中に監禁されるアイドルとマネージャー。
土門は首輪で繋いだアイドルに責め苦を味あわせ、同時にメスブタ呼ばわりする。
「お前はアイドルなんかじゃない!ただのメスブタなんだ!薄汚れたメスブタだ!」
マネージャーに助けを求めるアイドルであるが、マネージャーは檻の中に入れられていて、何もすることができない。
「ほら!メスブタ!自分の歌を歌ってみろ!」
抵抗するアイドル。
「あんなに得意げに人前で歌っていた歌だろ!俺の前で歌って見せるんだ!」
ついにアイドルは涙を流しながら、か細い声で持ち歌であるヒット曲を歌った。
土門はマネージャーを檻から出した。
しかし彼女には被虐行為を行うことはない。代わりにアイドルを鞭打てと命ずる。鞭を持つマネージャーの手が震える。
だが一発鞭をアイドルの体に落とすと、マネージャーの中の何かが壊れた。
「なにさ!いつもコーヒー、ジュース、タバコ、鏡って人を顎で使って!あんたなんか最低のメスブタなのよ!このメスブタ!メスブタ!!」
狂ったようにアイドルを鞭打つマネージャー。その様子を見て、高笑いをする土門。
以降マネージャーはドレスを着せられ、土門と同じテーブルに着き同じ高級料理を食べることになったが、アイドルは全裸で首輪に繋がれたまま犬の餌用食器で這いつくばったまま飯を食うはめになった。
地下帝国の暴君として振舞っていた土門であったが、ある時、一瞬のすきを突かれて、アイドルに花瓶で頭を打ちのめされ、不覚を食らった。
その隙に首輪を外し地下室から抜け出すアイドル。頭から流血しながらもそれを追う土門。
マネージャーは別ルートで逃げ出した。
迷路のような邸宅の中を全力で逃げるアイドルだが、大きな部屋、そして無数のドアの前に屋外に出ることができず、ついに土門に捕まり地下室に戻された。
その間にマネージャーは庭に出て、門扉の前にたどり着いた。
ここを超えれば社会に戻れる。そうすれば警察に駆け込むこともできるし、土門の悪逆非道な行為も明るみに出る。
その希望へと向かう門扉の前にマネージャーがやってきた時、一人の男が暗闇から現れた。そうデビル山本である。魔界から戻ってきたデビル山本である。
デビル山本はマネージャーの腹に一撃加え失神させると、その体を肩に担ぎチャイムを鳴らした。現れた土門。
「僕のお父さんですよね・・・待っていました」
邸宅に迎え入れられた、いや正確に言うと、あの嵐の晩以来、邸宅に戻ってきたデビル山本は、土門が用意したご馳走を食べ、生まれてこのかた寝たことがないベッドの上でガキみたいにはしゃいでいた。
「おりゃ嬉しいよ。本当にいい倅を持ったよ」
そう言って涙を流したかと思うと、地下室でマネージャーをベッドの上に縛り付け、その体にバターを塗り用意したシェパードに舐めさせ、最後は自分の一モツを挿入し、彼女の首を締め上げ、その窒息死する顔を見ながら絶頂に達した。
その様子を檻の中から見ていたアイドルは、口から泡を吹いて失神したのだった。
白昼の新宿駅近くの広告塔。
そこにパンティーだけを履いたアイドルが、ほうけた目つきで笑いながら群衆を見下ろしている。
有名アイドルの突然のあられもない姿の出現に、あたりは騒然となる。さらにパンティーを脱ぐアイドル。あのステージでテレビ番組で可憐な姿で愛されていたアイドルの変わり果てた姿に、群衆はどよめく。
そして近くのビルの一室から土門はライフルで、正気ではなくなってしまった彼女に照準を合わせる。
土門が引き金を引き、弾丸が彼女の胸に届いた時、アイドルは果てた。
実は鈴木則文は面白い人で、漫画の原作も手掛けている。
昭和の絵師と謳われた上村一夫の『鹿の園』という作品がそれで、この作品では映画撮影所を舞台に背徳の世界が描かれている。この作品の発表が76年。さらにその前年に上村一夫は『悪の華』という花道の世界を舞台にした、やはり背徳的大著を発表している。
例えば他にも団鬼六、澁澤龍彦であるとか『家畜人ヤプー』など、70年代の文化の底流には背徳性に強いこだわりを見せる、言い換えていうとデガダンに対する情景を描く作品が多いことに気づく。
逆に現在のエロ文化を考えると、70年代のエロ文化はそこに深い文学性が存在していることに気づくのである。
土門が自らが作り上げた地下帝国で暴君として振舞っている時、ひろみは乗馬に土門を誘って、自分からモーションをかけてみた。
それでも土門はつれないふりをした。しかし土門がひろみに気がないわけではなかった。
「もう。お兄ちゃま。小鳥にばっかり夢中になっていて、わたしには全然かまってくれないんだから」
「その小鳥だけど一匹は逃がしてやった。あとの二匹は死んでしまったよ」
「まあ。かわいそう」
「今度、僕のうちに来ないか。君に見せたいものがあるんだ」
「えっ。なにを見せてくれるの」
「それは来てのお楽しみさ」
数日後、ひろみは土門に連れられて件の地下室に降りて行った。あの数々の被虐が繰り広げられた地下室に。
そこでひろみの目に飛び込んできたのは、様々な拘束具、被虐に用いる種々の器具などであった。
「これは?これは何なの?お兄ちゃま」
「僕の理想を完璧に叶えることができるのは君しかいないんだよ」
そういうと土門はひろみの四肢を鎖でつなぎ、動けないように固定した。
「なんでこんなことするの?」
「君を愛しているからだよ」
檻の中に入れられているデビル山本が、辛抱たまらずに叫び出す。
「はやく!はやくやらせろー!ここから出してくれーっ!」
「お兄ちゃま。トイレに行かせて。お願い」
「ダメだ。ここで、僕の眼の前でするんだ」
「そんな。どうして意地悪するの」
「君が美しいからだ」
「はやく!はやく!やらせろーっ!」
やがて時間が経ち憔悴したひろみは、ついに聖水を漏らしてしまった。
檻の扉が開けられ、一散に飛び出したデビルはスボンをおろし、その一モツをひろみの花園に挿入させようとする、その瞬間、奴の首に首輪がはさまりウィンチで天井まで吊るし上げられた。
そして山本昌平は死んだ。
見ると土門は鉄仮面を被り、その下から涙が伝わっていた。
自らを貶めた土門に慰めの言葉をかけるひろみ。その姿はある種、聖女のようであった。
邸宅のベッドルームでお互いの身体を求めあうふたり。
このシーンだけソフトフォーカスで、すごく綺麗に撮っている。美しいラブシーンになっている。ふたりの関係があくまでプラトニックであったということが象徴されている。
鈴木則文はあるインタビューで、このように言っていたことがある。
「俺はカメラのフォーカス、全体に合わせるんだよ。そのほうがバカっぽく見えるだろ」
「俺は照明も全体に当てちゃうんだよ。そのほうがバカっぽく見えるだろ」
この言葉を放った監督の作品とは思えないほど、土門とひろみのラブシーンはカメラのフォーカスにも照明にも凝っている。
やはり天才・鈴木則文である。
しかし翌朝土門が目覚めると、傍に寝ていたはずのひろみの姿がない。
慌てて地下室に降りてゆく土門。そしてそこには首を吊ったひろみの変わり果てた姿があった。愕然とする土門。
そしてそこには置き手紙のような遺書がある。それを読み始める土門。そこにはこのような内容が書いてあった。
実はひろみは土門の前では処女のように振舞っていたが、12歳の時に父に犯され、以来、その関係はずっと保たれ現在に至ったこと。
土門に辱めを受ける前から自分は背徳的世界の住人であり、そしてこれ以上その世界に住み続けることに限界を感じ、自ら命を絶つと。
シーン変わって夕映えの海を望んでいる土門。
その首に掛けているロケットペンダントを土門が開くと、そこには母の写真が仕舞われてあった。
そこに浮かぶ〝完〟の一字。
「トラック野郎」の監督がここまでやるかと思ったが、鈴木則文の持っている背徳性が極限まで追求された一本だとも思った。
だがそこに強引に星桃次郎をぶち込んでくる鈴木則文は、やはりただ者ではないと断言できる。
情報筋によると鈴木則文は生前、洗礼を受けていたそうである。