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執筆者の写真makcolli

俺にさわると危ないぜ


祐次郎か?旭か?と聞かれれば間違いなく旭だと答える。

リアルタイムではさすがに旭の映画は見ていなかったが、祐次郎に関しては「太陽に吠えろ」とか覚えていて、事件が解決するとなぜか祐次郎は、警察署のなかなのにブランデーとか飲んでいる人ぐらいの印象しかなく、死んだとき、なぜあそこまで世間が騒いだのか自分としてはピンと来なかったのだが、旭においては日活がロマンポルノに転向したのち、東映で「仁義なき戦い」に参戦。

その他、実録やくざ映画の中核を担うのだが、なかでも中島貞夫がメガホンを撮った『唐獅子警察』の実弟役・渡瀬恒彦との死闘は忘れられない。

で、その旭。祐次郎と違い日活がかなりモンド色を強め出した頃の作品でもきちんと主役を張っているからやはり凄い。例えば銀座のホステスたちのトラブル解決師を演じる「女の警察」シリーズなど、「渡り鳥」シリーズだけが旭の魅力ではない、と思わせるものがある。

そんでもって『俺にさわると危ないぜ』であるが、監督はこの作品が初監督の長谷部安春。長谷部安春の名が俺の頭に深く刻まれたのは、「野良猫ロック」で梶芽衣子や藤竜也、岡崎二郎に郷治たちがLSDの取引からハーフ狩りまで無軌道の限りを尽くし、こんなかっこいい映画あったのか、と思ったことがきっかけだった。

初監督作品っていうのは、本人も相当の意気込みでやるせいか、力作が生まれる場合が多いし、長谷部安春自身もそれまでの日活映画にはないものを撮ってやろうと狙っていたのかもしれない。

すべてはベトナム戦争の銃弾飛び交う戦場から始まった。その前線に戦場カメラマンとしてシャッターチャンスを狙っている旭。

これがまたナイトシーンなので、炸裂する爆弾の閃光やビュンビュン飛ぶ銃弾の光が激しく、すごく臨場感のあるシーンになっている。

帰国途中、飛行機内でスッチーの松原智恵子をナンパした旭は松原智恵子をクラブに誘った。ところが松原智恵子は何者かに誘拐されて?

作品のバックストーリーは軍人であった松原智恵子の父が、金塊を隠匿物資としてどこかに隠し、それを不良外国人とマフィアが結託して狙うというもの。

そこに6人の女、ブラックタイツなる表の顔はゴーゴークラブの専属ダンサーだが、やはり金塊を狙っている集団が絡んでくる。

そして旭も金塊を狙っていると間違われて、マフィア、ブラックタイツの双方から狙われるというアクションもの。

だがこの作品。同時期の日活の作品に比べるとやはり、相当にモンド色が強い。

そもそも旭の住んでいる場所が左卜全が主催する百地流忍術研究所というところで、忍者屋敷になっている。

旭を狙ってくるブラックタイツも、「忍法ガムガム弾」とか言って噛んでいるガムを投げつけてきたり、旭をベッドに誘い込み「忍法オクトバス」と言うのは、その柔肌で旭に吸い付き放さないというもの。

他にもクラブで金粉ショーが繰り広げられたり、旭が松原智恵子が拉致されていると思い乗り込んだ場所はヌードスタジオで、手を後ろ手に縛られた女をおっさんたちが撮影している。

逆にブラックタイツたちに拉致された旭は、トルコ風呂に連行され、昔のトルコにあった(と言っても俺自身、映画でしか見たことないのだが)カプセル型の蒸し風呂に閉じ込められたり、しっちゃかめっちゃかな騒ぎのなかで、意外と二枚目半な旭を見ることができる。

長谷部安春は鈴木清順の助監督をつとめていたそうで、随所に清順ゆずりとも言える斬新な演出が見れる。特に作品の中の色の使い方、配色が印象的で横位置で走っている車の背景が赤になり、黄色になり、青に変わっていったり、ガレージのなかでマフィアとのアクションシーンがあるのだが、先に銃弾が貫通したペンキの一斗缶のカットを見せておいて、ブラックタイツの一人が銃弾に倒れ、旭に抱きかかえられるのだが、その地面にゆっくりと青いペンキが広がってゆく、とかは凄いうまいと思ったし、冴えていると思った。

配色のことで言うと、照明も印象的で、現実にはそんなことないんだけど、赤なら赤、青なら青と原色系の照明が多用されていて、それがまたカラフルな印象を与えている。

他にもブラックタイツが使うゴルフボール爆弾とかアイデアに富んでおり、ちょっとコメディになりそうかな、というところをマイトガイ・旭の活躍がそれを思いとどまらせ、見飽きないアクションに仕上がっている。

旭とブラックタイツは次第に共闘し、松原智恵子救出のためにマフィアと戦うのだが、この作品の最大の見せ場は拉致されシミーズ姿にされた松原智恵子か?

さらにブラジャーにパンティ一枚の姿にさせられるという、あの松原智恵子が!あのお嬢様女優の日活三人娘と言われた松原智恵子が、あられもない姿にさせられ、さらにスプレーペンキを吹きかけられ、まるで舞踏の人みたいに全身真っ白にさせられるという、でも見ているこっちとしては高得点叩きまくりのシーンであろうか?

本人にとっては屈辱的なシーンだったのだろうか?それともプロ根性、女優根性で挑んだんだろうか?

とにかくくどいようだが松原智恵子が、ブラにパンティー一枚の姿にさせられペンキ吹きかけられるという、例えれば藤純子が『尼寺(秘)物語』で尼さんのハゲズラを被り、盛りのついた若山富三郎に犯されまくるのと同じくらいにレアな諧謔心をくすぐるシーンがあるだけでもお薦めの作品である。

それでその松原智恵子を救出する為に、旭がガスバーナーでマファアを焼き殺してゆくというのもナイス!

マフィアとの死闘の中、一人、二人と死んでゆくブラックタイツ。

旭とブラックタイツのリーダーは、マフィアのアジトを突き止めボートを走らせるのだが、そこがおそらく戦時中に日本軍が東京湾に作った海保と呼ばれる要塞で、俺のうちの海岸線からも見えるのだが、この廃墟になっている要塞がものすごく雰囲気があっていい。しかもセットじゃなくて本物だから余計にいい。

その要塞に向かっている途中、リーダーがなぜ金塊を狙っているのか、その理由を吐露する。実は彼女たちは全員沖縄人で隠匿された金塊は、戦時中、沖縄で強制的に供出された金だったのだ。彼女たちはそれを取り返すために戦っているのだった、と突然ディープな話が盛り込まれるのだが、それが作品に深みを与えていて単なるモンド、お色気アクション、松原智恵子のセミヌードだけが見せ場の作品ではないということを印象づけている。

要塞におけるマフィアとのアクションシーンも、旭たちがヘリコプターで空から狙われ、それを空撮で撮っていたり、すごく手が込んでいて臨場感に溢れている。

ここで活躍するのが旭が、左卜全から授けられた百地流大砲の術というもので、バズーカ砲の和式みたいなものなのであるが、これでヘリを撃ち落とす。

最後の死闘のなか、旭は松原智恵子を救い出すが、ブラックタイツのリーダーは旭をかばって絶命。その胸には赤花のコサージュが飾られていた。

警察立ち会いのもと、金塊が入っているという金庫を開けてみたのだが、全部終戦直後の札になっていてすでに効力のないものだった。

初監督作品にして、長谷部安春の才気を感じさせ、なにより見ていて面白い作品だった。そのなかでところせましと活躍する旭は、やはり祐次郎よりかっこいい。

なにより松原智恵子のむっちゃ恥ずかしい姿を忘れずに。

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