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執筆者の写真makcolli

ウルフガイ 燃えろ狼男


某日、千葉ちゃん主演の『ウルフガイ 燃えろ狼男』をフィルムセンターで見て来た。

神波史男。その脚本家に意識的になったのは、つい最近だった。振り向けば神波史男の作品をそうとは知らずに見ている自分がいた。

『女囚701号 さそり』、『0課の女 赤い手錠』、『沖縄やくざ戦争』、『現代やくざ 人斬り与太』、そして『仁義の墓場』。

どれもこれも脳裏にきつく焼き印を押された作品ばかりだ。ちなみに深作欣二は、笠原和夫よりも神波史男と組んでいる回数の方が多い。

「逝ける人を偲んで」、今フィルムセンターでやっている特集は、去年世を去った映画人を偲んでの特集である。神波史男も去年、世を去った。

そんな神波史男の脚本を映像化したのが、東映のバッドムービープリンス・山口和彦。

冒頭、トップ屋ルポライター千葉ちゃんの目の前で、安岡力也が、「虎だー!虎に殺されるーっ!」とわめきながら、姿は見えない何者かによって八つ裂きにされて殺される。

そして力也も含む元GSバンドのメンバーも次々と、同様に死んでゆく。この変死はただごとではないと思った千葉ちゃんは、同じくトップ屋の曽根晴美と事件の真相を追求して行く。

芸能関係に強い曽根晴美は、ある事実を掴む。それは将来を嘱望されていた新人歌手・奈美悦子がGSメンバーたちに輪姦され、さらに梅毒をうつされて、今は場末のストリップ劇場で歌っているということだった。

生き残りのGSメンバーと曽根晴美を連れて、奈美に会いに行ったが、「へたなことかぎまわりやがって」とやくざが登場。きつくパンチパーマを頭に当てた千葉ちゃんの突きが、蹴りが、跳躍が躍動する。

その頃、ストリップ劇場で男に対する呪詛の歌をうたっていた奈美は、おっさんたちから「なにやってんだよー!裸見せろ!裸!」の怒号を喰らう。それでもうたい続ける奈美。

そのあと確か千葉ちゃんが奈美を助け出し、奈美は男たちに輪姦されたことをとつとつと語り、千葉ちゃんに「私が抱けるの?」と迫り、千葉ちゃんは奈美を抱こうとするのだが、奈美は「もう。いいわ」と断る。

全編を見ていて思ったのだが、山口和彦という人は梶芽衣子主演の『銀蝶渡り鳥』のような秀作も、ものしているのだが、ふっきれたところがない。

大信田礼子主演の「ずべ公番長」シリーズも、あれはあれで好きなのだが、山口和彦が大信田礼子を大事にしたのか、それとも事務所的にNGだったのか?鈴木則文とかだったら同じ路線で、池玲子や杉本美樹におっぱい丸出しにさせて、仁義の一つや二つ切らせていただろうに。

あるいは石井輝男なら、「梅毒」という設定が決まった瞬間に、その女優の顔をドロドロの特殊メークにさせただろうに、山口和彦にはそういう「やってまえ」的なところがないので、見ていて中途半端な感じになる。

GSのメンバーたちが死んで行ったのは、奈美悦子の怨念が作り出した「見えない虎」が八つ裂きにした、という荒唐無稽な話であることが徐々に分ってくる。

ではなぜ、奈美悦子はレイプされたのか?曽根晴美はさらにその事実を追求した。奈美悦子には当時、代議士の息子のフィアンセがいた。しかし代議士は息子をある有力政治家の娘と政略結婚させたいと思い、邪魔な奈美を所属プロダクションの社長、東映の絶倫帝王・名和宏を使ってレイプさせた。

奈美悦子が梅毒に感染したことを知ると、代議士の息子は奈美を捨てた。そして、その事実を掴んだ曽根晴美もやくざに消された。

曽根晴美の遺したノートは千葉ちゃんの手に渡った。しかし、さらに話は荒唐無稽になるのだが、JCIAという謎の組織が現れ(そのボスは室田さん)、奈美の持っている怨念の力を利用して邪魔な政治家たちを次々に殺してゆくのだった。

同時にJCIAに囚われの身になった千葉ちゃん。手術室にぶちこまれ腹を切開され、そのまま牢に入れられるのだが、飛び出している臓物がニョロニョロニョロと腹の中に戻り、さらに傷口も塞がるのだった。

さらにさらに荒唐無稽なことなのだが、千葉ちゃんは狼の血を引く、狼の衆の生き残りで、その腕力で鉄格子をぶちやぶった千葉ちゃんは、故郷の山間地を目指すのだった。

故郷にやってきた千葉ちゃんの脳裏には、幼い日の出来事が蘇った。なぜか地元の猟師たちによって皆殺しにされていった狼の衆。母親がお前だけは生き残れと言って絶命したこと。

とか思い出しているうちに、またしても千葉ちゃんは猟師たちに囲まれ、絶体絶命のピンチになっているところを、蔵間未亡人の渡辺やよいに助け出されたのであった。

渡辺やよいの姿は、亡き母にうりふたつであった。

洞窟内において犬神の祠を前にし、渡辺やよいの体をむさぼる千葉ちゃん。

「おまえは俺の母親なんだ。おまえと出会って、俺は生き返ることができた」

そう渡辺やよいのおっぱいを吸いながら言う千葉ちゃん。満月の夜に狼男の千葉ちゃんの力は最大に発揮されるという。

そんな渡辺やよいのおっぱいに酔いしれていたいた時、突然地鳴りがした。JCIAがやってきて山にダイナマイトを仕掛けたのであった。

急いで洞窟から脱出する千葉ちゃんと渡辺やよい。

そこにはJCIAの腹心、待田京介と奈美悦子がいた。待田京介は、

「あの男はお前を捨てたんだ。呪え!呪い殺せ!」

とけしかける。あの幻の虎に八つ裂きにされるのではないかとびびる千葉ちゃん。

「好きだったのに。好きだったのに・・・なぜわたしを捨てたの?」

とその時、一発の銃声が鳴り響き、奈美は崩れ落ちた。千葉ちゃんが振り向くと、ライフルを手にした渡辺やよいが立っていたが、彼女は八つ裂きに殺されていた。

渡辺やよいを抱き寄せる千葉ちゃん。その瞳には怒りの炎が宿っていた。やばいと思った待田京介はジープに乗り込み逃げた。それを追う狼の血を引く千葉ちゃん。すぐさまジープに飛び乗り、待田京介を背後からスリーパーホールドによって絞め殺した。

千葉ちゃんが飛び降りたジープは崖に転げ落ち爆発した。

というところでエンド。

荒唐無稽。そう荒唐無稽である。だったら狼男の千葉ちゃんがお決まりのように、満月を見て血が逆流し、牙がはえ、けむくじゃらになって次々と人間を殺してゆく、ぐらいまで描いて欲しかった。てっきりそうなるんだとばかり思っていたが、そうはならなかった。

そこが山口和彦のふっきれないところなのだろうか?借りにこの作品で千葉ちゃんが、けむくじゃらの特殊メークをして暴れ回っていたら、山口和彦の評価も少しは違ったものになっていただろうに。

神波史男の脚本ではどのように描かれていたのか?そこのところが気になる。

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