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執筆者の写真makcolli

日本悪人伝 地獄の道づれ


若山富三郎主演『日本悪人伝』の続編、『日本悪人伝 地獄の道づれ』である。

大正12年。

神戸の港に停泊しているウンコ船の中で、若山富三郎(以下、トミー)は、港湾労働の連中と手慰みの賭場を開いていた。

そこへ雪崩れ込んでくる警察。

「サツやーっ!」

その第一声を発したのは、確かに川谷拓三であった。

トミーは警察署に連れて行かれ、渡辺文雄刑事から取り調べという名の拷問を受け、ついにはその額に(警)と刻印された焼ごてを押された。

その瞬間にドーンと浮かぶ、血糊のような色した「日本悪人伝 地獄の道づれ」の文字。

始まるタイトルバック。

獄舎に投獄させられたトミーは、窓越しに降る雪を成すすべもなく眺めている。

7年後。

トミーの姿は横浜にあった。中国人、西洋人、日本人でごった返す街の中、トミーはある洋食店に入り、カツレツを食べていたが、おもむろにチャックを開け、淫部を手でまさぐるとガッツりチン毛を引き抜き、それをカツレツの上にまぶした。

「すんまへん。これ見ておくれやっしゃ。あんたんとこでは、こんなもの客に出すんかいな」

「申し訳ございません」

「お前、無銭飲食の常習犯だろ。そんなことでごまかされないぞ」

そう言って登場したのは、誰あろう志賀勝だった。

のちに川谷拓三、室田日出男などとピラニア軍団として世の脚光をあびることになる志賀勝だが、実はトミーの弟子でトミー主演作には橋役として登場することが多いということは東映映画ファンの諸兄ならご存知だろう。

乱闘になる店内。

志賀勝に加えて、店のオーナーなのか曽根晴美も登場。さらに聾唖者でガマジョウと呼ばれるハゲ頭の男はチェーンを武器にしている。

が、志賀勝や曽根晴美を椅子でぶっ叩いてのしてしまうトミー。さらにガマジョウの頭をバーカウンターに打ち付け、その頭はタコのように真っ赤な鮮血で染まっていく。

このようにして出会ったトミーと曽根晴美一派なのであるが、急速に接近してゆく。

レストランの地下には違法カジノがあり、外国の船員などがギャンブルに興じていた。さらに地下の一角には女たちを監禁している部屋があり、聞けば彼女たちは外国に売り飛ばされる運命にあるという。

また曽根一派はアヘンの密輸までしているという。

トミーが地下を案内されている時、顔は青白く片腕のない男が現れ、曽根晴美に仕事をくれと哀願してきた。

ヤツはフロッグと呼ばれていて、演じるのはこういう役をやらしたら右に出る者がいない小池朝雄である。

曽根晴美はトミーに会わせたい者がいると言って、ある部屋に案内した。

「こいつをこれからあっしの右腕にしようと思っているんです。よう。挨拶しな」

そう言われてトミーが頭を上げた時、そこにいたのは、まさかまさかの渡辺文雄であった。トミーにしてみれば、自らの額に一生消えない(警)の焼印を押してくれちゃった仇敵が目の前にいるんだから、トサカにきちゃってナイフで渡辺文雄を殺そうとしたが、その腹には曽根晴美が構える銃口が押し当てられていた。

「何があったか知らねえが、旦那に謝るんだよ」

「・・・」

「謝らねえと命はねえぞ」

「す、すんまへん」

「あっちへ行ってろ」

部屋から出て行くトミー。

「あいつとは面識があったんで?」

「神戸のダニで銀蔵っていうんだ」

その頃、横浜の埠頭では修道女が歩いていた。そこへ杖をついて歩いてきた小松方正はそのまま女にぶつかり倒れた。方正は大袈裟に言う。

「あーたたたた。痛い。どこのどなたか分かりませんが。哀れなめくらに当たってくるなんて。どうか家まで送ってくれませんか。あーたたたた」

修道女は方正に言われるままに、ヤツを寝ぐらまで送ってやったが、ヤツは急に態度を豹変させ、修道女を縄で縛りあげ、

「キーヒヒヒヒ。たっぷり味わってやるぜ」

と言ったが、その背中に蹴りを食らわせたのがトミーであった。そして方正を縛り上げると、逆に修道女を頂こうとする体勢に入った。

「野郎。畜生め。因果者の俺をこんな目に遭わせて、てめえだけいい思いをしようってのかよ!」

「やっかしいや!おとなしくしとらんかい!気が散るやないか!」

そう言ってトミーは修道女の股間をまさぐった。

「われ。腹ボテやないけ」

「わたしの名前はマリアというんです。神に仕える身でありながら、このようなことになってしまい。もう生きていくことはできません。どうか助けてください」

シーン変わり。

手術台の上に寝ているマリアがいた。

「俺も長いこと医者やってきたけどよ。妊娠五ヶ月目の堕胎手術なんて初めてだぜ。もし、死んじまった時はそっちで責任取ってくれんだろうな」 そう言うフロッグ。

「あんじょう任しとけ」

そう言ったトミーであったが、出て来た堕胎児を見た時は、ゲロを吐きそうになった。

トミーは神父に扮し、フロッグは弁護士に扮し、ある別荘に外国人船長を訪ねていた。

「マリアさんはですね。あなたとの肉体関係によって、妊娠してしまったんですよ。ですがかわいそうなことに、お腹の子供は無事生まれてくることはできませんでした。ねえ。神父」

「わ、わしもやな。神に仕える者としてわやな。こういうことは許されへん。思うちょるんや」

「マリアさんはぜひ、このことを裁判で争いたいとおっしゃっているんですが」

「あーははは。あなたたちバカね。日本の裁判所、わたしをさばくの権利ない」

「そう言ってもですな。あなたが所属する船会社を訴えれば、あなたの地位を奪うこともできますぞ」

「何を言っているんだ」

そう言って現れたのは、悪役のテッパンと言ったらの金子信雄であった。

「きょうのところは、わしが金を払うから引き取ってくれ」

トミーとフロッグは見事、金500円をゆすり取った。しかしトミーがフロッグに渡した金は20円程度だった。

「しけてるなあ」

トミーは寝ぐらに戻ると、毛布にくるまって寝ているマリアに言った。

「もう。体は大丈夫なのけえ?あの毛唐の船長から金取ってきてやったわ」

そう言うとマリアには100円を渡した。

「この中からあなたにお礼をしなきゃ」

「そ、それはええのんや」

そしてトミーは自分の布団にくるまって寝入ってしまった。

それを見計らったマリアはトミーの頭を貧乏徳利で殴打し気絶させ、その内ポケットから残りの金を盗み取ると、

「これからはわたしも宗旨変えして生きていくんだ」

のセリフを残し、夜の闇の中に消えていった。

トミーは曽根晴美から呼び出しをくらった。

て怖いお兄さんたちが待ち構えていた。

内田朝雄が口火を切った。

「お前か。銀蔵っていうのは亀善さん(金子信雄のこと)をゆすりなんかしやがって、横浜一帯の貿易を取り仕切っている亀善さんにゃ俺たちはお世話になっているんだ。港湾の仕事も亀善さんから頂いているんだ。それも知らないで、てめえは。体で覚えさせてやれ」

そう言うと怖いお兄さんたちは、トミーに対して殴る蹴る、暴力の台風を見舞ったのであった。

亀善は見せかけは庶民に対して、米をただで配り、貧乏人の神様などと呼ばれる男であったが、裏では女たちを海外へ売り飛ばす人身売買、さらにアヘンの密輸をしている悪党であった。

さらに、そこに癒着しているのが内田朝雄組長のヤクザであり、曽根晴美はその末端にいた。

渡辺文雄も亀善や内田朝雄とつながっており、警察の情報を横流ししているのであった。

ついに監禁していた女たちを外国船に乗せる夜が来た。

船底に女たちを押し込め、内田組の若い衆とトミーは沖合に泊っている客船を目指したが、ナイフの使い手であるトミーは、さくさくと若い衆たちを殺していった。

そして船底にいた女たちに、

「安心せいや!なっ!安全なところへ連れて行ってやるさかいに!そのかわり言うこと聞かなあかんぞ!」

と言って、女たちを陸に上げ、汽車に乗せたのであったが、そこには女衒がいて、つまるところトミーは女たちをまんまとかっさらい、売り飛ばしたのだ。

それを知らない女たちは、汽車の窓からトミーに向かい、

「ありがとうございまーす」

と言い手を振っていた。それに対してトミーは、

「おっちゃんの言うこと聞かなあかんぞー」

と答えたが、最後に、

「アホ」

と小声で言った。

曽根晴美の元に戻ったトミーは、口から出まかせを並べた。

「そりゃもう命からがらでしたがな。突然こう闇の中から船が横付けになったかと思うたら、そこから五、六人の男たちが乗り込んできましてな。みんなあっという間に殺されて。あても必死で海に飛び込んだ、こんな訳で」

「やったのはこの計画を知っている者に違いねえ。つまり裏切り者がいるってことよ」

「う、裏切り者。そいつは誰だんねん」

「銀蔵。てめえのことだよ」

「ふっ。わしかてな。最初からお前のこと信用して戻ってくるほどアホやないんや!」

この会話の最中、ガマジョウは絶えず疑いの目をトミーに向けていた。

「どうやら死にてえらしいな。あれを見ろ!」

そこにはライフルを構えた志賀勝がいる。と、ガマジョウがその後ろに回り込みチェーンで志賀勝の首を締め上げてゆく。

それを見たトミーは曽根晴美にナイフを投げつけ殺した。志賀勝も窒息死していた。

「おい。ガマジョウ。なんでわしのこと助けたんや」

するとガマジョウは紙に、

「オレノコト ハンパモノト イウカラ」

と書いた。普段から曽根晴美はガマジョウに対して、差別用語を連発していた。

トミーとガマジョウコンビは樽の中に、曽根晴美と志賀勝の死体を入れ、そこにコンクリートを流し込み海に沈めた。

惜しいと思ったのはここだった。コンクリートが曽根晴美と志賀勝の頭を隠す前にカットになっているのだ。

これが監督が石井輝男だったなら、絶対に役者が窒息死しそうになってもカットはかけなかったであろう。

何かこのあたりに、この作品の監督、村山新治という人の凡庸さを感じてしまう。

敵役も金子信雄と内田朝雄という悪の枢軸とも言える二人なのに、なにかその良さを生かしきれていない気がする。

とりあえずトミーとガマジョウは逃げた。そして漁師小屋のようなところに潜んでいた。

「おい。ガマジョウよ。これからどうしよけ?」

するとガマジョウは二本の指を下に向け、トコトコ歩くような仕草をした。

「なに言うてるんや。オシと額に焼印がある男や。すぐに分かってまうで」

その通り二人は曽根晴美と志賀勝殺しの容疑をかけられ、警察に捕まってしまう。そして竹刀で徹底的に頭を殴打され、血みどろになるトミー。

ガマジョウにも同様に折檻が加えられたが、口をパクパクさせるだけのガマジョウに警察は、

「オシ相手にしても仕方ないわ!」

と言い放った。

さらに曽根&志賀の手下二人が行方不明になったということで、内田組もトミーを追い詰め、トミーは崖から真っ逆さまに落っこちていった。

横浜外人墓地。

その一角にある石造の建物。そこがマリアの寝ぐらだった。マリアが戻ってみると、その床に血まみれになって倒れているトミーがいた。

「ここがあたしのヤサだと知ってきたのかい。でも、もう昔のマリア様じゃないんだよ」

そう言うとマリアは十字架のネックレスを握り、その先端から刃物を出して、トミーを刺そうとしたが、トミーがポケットから札束を取り出すと、それを躊躇した。

頭や腕を包帯でぐるぐる巻きにしていたトミーであったが、

「やるで。やったるで。こうなったら亀善ぶっ潰すまでやったるわ」

と息巻くのであった。

そんで手始めっていうことで、亀善の妻を犯しちゃおうということになった。

亀善の妻は馬に乗って遠乗りするのが日課で、そこをトミーは狙った。無理やり馬を止めると、妻を草むらの中に押し倒し、その体を貪った。

「やめて!ケダモノ!汚らわしい!」

その声に耳を貸さず、いや抵抗されたから俄然燃えたのかトミーはズボンを脱ぐとイチモツを妻の秘密の花園へと押し入れた。

恍惚の表情を浮かべる妻。

「ぐっふふふ。明日も来るんやで。しかも500円持ってや。亀善の奥さんなら訳もないことやろ」

「人でなし!そんな脅しには乗りません!」

「そんなこと言うてええんかい。きょうのこと洗いざらい亀善にぶちまけるで」

次の日も妻は来た。

どこかの牧場であろうか。納屋の中で再びトミーは妻の体を貪りつくした。

次第に妻はトミーの頭に手を回し、

「銀蔵。銀蔵」

と囁きながら吐息を漏らすのであった。女のさがに覚醒していくのであった。

だが、そのことは渡辺文雄や内田朝雄によって金子信雄の耳に入ることとなった。

寝室の中で相対す金子信雄と妻。

「この売女!なんだってあんなどこの馬の骨ともわからない男なんかと!」

そう言うと金子信雄は妻をベッドに押し倒し、体を求めたがすぐに何もできなくなってしまった。ようするにインポだったのである。

「ほら。すぐに何もできなくなってしまうじゃありませんか。わたしは人形じゃありませんのよ。生きた生身の女なんですから。ここに閉じ込められているだけじゃ地獄と変わらないじゃないですか」

「なにを生意気な。お前なんか公爵の娘と言っても乞食公爵の家の出じゃないか。お前の実家を生かすも殺すも俺の自由にできるんだ」

「そう言うあなたこそ人足上がりじゃありませんか」

まはや夫婦の関係は修復できないところまで来ていた。いや。もともといびつな結婚だったのではないだろうか。

であるから、妻が銀蔵の精力に魅せられたのも、その精力に身をまかせることが女としての幸せであると考えたのも当然のことだろう。

亀善の妻を陥落させたトミーであるが、さらに逆襲の手は打っていた。

例のアヘン密売の話である。アヘン密売に使われる客船が港に入港すると聞いた銀蔵、ガマジョウ、マリア、フロッグ、スケコマ(小松方正)たちが望遠鏡を使って、その様子を観察していた。

すると例のマリアを犯した船長が船員に、赤いペンキと告げるのをガマジョウが読み取った。ヤツは読唇術ができるのだった。

確かに赤いペンキの線が入った荷袋があって、その袋は車で運ばれながらも途中の倉庫の前に投げ捨てられるのであった。

それを中から出てきた男たちが、人目を気にしながら倉庫の中に入れてゆく。その倉庫の前にスケコマが立って、

「もしもし。もしもーし」

と声をかけた。中から出てきた男は、

「なんだ!てめえ!ここはドメクラなんかのくるところじゃねえや!」

と言ったが、スケコマの杖の先からビュッと刃物が伸びると、男を突き刺し殺した。男があげた悲鳴に中からさらに男たちが飛び出してきたが、トミーが投げるナイフにやられる者、ガマジョウのチェーンで締め殺される者もいて、殲滅させられた。

トミーたちが奪い取った荷袋を寝ぐらに持ち帰り割いてみると、そこからアヘンの入った箱や、密輸の宝石などがわんさか出てきて、トミーファミリーは我が世の春とばかりに喜んだ。

さらにセックスマシーンのようなトミーの魅力に、亀善の妻の足はトミーたちの寝ぐらへと向かっていたのである。

そしてベッドに招き入れられた妻は、またしても盛りのついた若山富三郎のセックスの虜になったのだが、それを目撃しちゃったマリアとしてみれば、もうトサカに血が昇っちゃって、

「あたいのベットから降りろよ」

「何をするのです。おやめあそばせ」

と亀善の妻、いや今となっては若山トミーのセックスの奴隷になった女とキャットファィトを繰り広げたのだが、もう前後不覚になって亀善のところへ若山ファミリーが拠点にしている場所をチクリに行ったら、そこに例の船長がいて、

湯船に連れ込まれて、

「おー。マリア。かわいがってあげましょうね。いじめてあげましょうね」

とか言われて、おっぱい吸われたり、湯船に頭沈められたりする始末になった。

一方、金子信雄、内田朝雄、渡辺文雄のほうでは密輸のこともあるし、若山ファミリーは皆殺しにしちゃおうということになったのだが、

「奥様はどうするんです」

と問われた金子信雄は、

「一緒にやってしまえ。これ以上、亀善の名前に傷がつくといかんのでな」

と、さも悪役というセリフを発した。

若山ファミリーが愉快にやっている時、外でダンプの止まる音がした。

「マリアが裏切りやがったんだ」

とスケコマ。

「わたしに任せてください。わたしには手を出せないんですから」

そう妻は言うと玄関の前に立った。

「わたしです。淑子です。みんなすぐに帰りなさい」

が、小池組の者達はためらいもせずダイナマイトを投げ込んだ。

「ギャーッ!」

淑子は死んだ。このシーンは良かった。貞淑だった女が最後は、屠殺場で殺される豚みたいな声を発して死んだのが良かった。

その後もどしどしと投げまこれるダイナマイトによって、建物は破壊されていった。その残骸の中に倒れているスケコマ。

「因果者だから逃げ遅れちまったよ」

そう言ってこと切れるスケコマ。

「スケマコーッ!」

叫んだのはフロッグであった。

あとは本当に東映のセオリーなのであるが、殴り込みをかけに行くというパターンが展開される。

当初、一人で殴り込みに行くというトミーに対してガマジョウは、ゼスチャーを示し俺も行きたいと意志を示す。さらにフロッグもスケコマの遺品である杖を持ち俺も行くという。

すべてが片付いたと思っていた亀善たちは、酒盛りなんかやっちゃっていた。

そこに乗り込んできた銀蔵、ガマジョウ、フロッグの三人。銀蔵はナイフで、ガマジョウはチェーンで、フロッグは仕込みの杖で内田組の若い衆をメッタメッタにしていく。

次第に家屋から火の手が上がる。

紅蓮の炎燃え盛る中、Kill Kill Timeの幕開けとなり、マリアはマリアで風呂場にて船長の胸に十字架から飛び出した刃物を突き刺していた。

鮮血に迫ってゆく湯船。

聾啞であるガマジョウは悲鳴すらあげることができずに死んでいった。

「アヘンさえ。アヘンさえやらなきゃもっとマシな人生を歩けたんだ。なあ。亀善さんよお」

そう言ってフロッグは片腕で杖を振り回したが、若い衆に囲まれ、その刃の下に倒れた。

いつの間にか内田朝雄は血まみれになり、口をかっと開いて死んでいた。

「やめろ。やめてくれ。なっ」

金子信雄はそう言いながらも、トミーに向かって日本刀を振りかぶった。その瞬間、トミーは信雄の後ろに回りこみ、その背中にナイフを突き立てた。

残ったのはトミーの額に(警)の焼印を入れた渡辺文雄一人。迫り来るターミネーターのような若山富三郎。後ろに下がりながら文雄は言う。

「くるな。くるな」

そして拳銃で富三郎の体に鉛玉をぶち込むが、倒れないターミネーターのようなトミー若山。その手から放たれるナイフが文雄の手から拳銃を奪う。

燃え盛る木材を手にしながら、文雄に近づいていくトミー。

「ひい。ひーい」

木材を文雄の顔面に当てようとしたその時、画面に浮かんだのは完の一文字。

フリークスたちの戦いは終わった。

だが、そのフリークスたちが何故か印象に残らないのも事実だ。

額に焼印を押された男、片腕のアヘンジャンキー、聾唖者、盲者。もっと大袈裟でもいいのではないか。マンガチックでもいいのではないか。

キャラの魅力を引き出していないのが残念のような気もする。

元公爵家夫人が若山富三郎のセックスの虜になるという展開は面白かったが。

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