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執筆者の写真makcolli

高校生番長 深夜放送


某日。ラピュタ阿佐ヶ谷でレイト特集中だった「大映ハレンチ青春白書」を観に行く。今回の一本は『高校生番長 深夜放送』(70年)。

昨今はネットと言う便利なツールによって、多くの若者がコミュニケーションを取っている時代であるが、70年代にはラジオの深夜放送が若者にとって、自身を代弁してくれる、そして見ず知らずの誰かとコミュニケートできる手段であったようだ。

そんな深夜放送を題材にしたこの一本、着眼点はなかなかにいい。

しかしそれを軸にして、物語を進行させていった時、なんとなく間抜けに見えてくるというか、作品をまじめに作ろうとすればするほど、なにかがズレているというか、逆に笑えてくる滑稽さがある。

70年時点での若者の生態を描き出そうとした本作だが、もともと全盛期には文芸作品や重厚な大作を製作していた大映であるから、ヤングのナウな感性をスクリーンに展開させることなど無理だったのかもしれない。

物語は優等生タイプの女子高生、八並映子の名を騙って深夜放送に「わたし集団売春をしているんです」という今でいうなら援助交際の実体を綴ったショッキングな体験記が送られてきて、反響を巻き起こすのだが、八並自身にはそんな覚えはなく、自分の名を騙った者の正体を暴き出してやろうというもの。

そして、この八並を巡って優等生の篠田三郎(のちウルトラマンタロウ)と、源三郎(役名)がしのぎをけずる熱い闘いが待ち受けている。

なお深夜放送のDJアシスタントとして松坂慶子が出ていて、かなりキュート。

「KKさん。あなたへの反響の投書はたくさんきていますよ。この放送を聞いていたら局に取りにきてね」

というDJの声に乗り、というか真犯人への手がかりを見つけるために八並はラジオ局に足を運ぶ。受け取った投書には、封建的な性モラルを打ち破るものだとして、同世代から圧倒的に支持するとの声が寄せられており、八並はいつの間にかヒーローとして崇められる存在になっていたのだった。

この時代、海の向こうのアメリカやヨーロッパでは「性の解放」、つまりフリーセックスが叫ばれており、今みたいにネットとかない時代に「平凡パンチ」とか深夜ラジオしか情報源がなかった極東のしがない四畳半の部屋で、多くの若者がその断片的な情報をもとに妄想を膨らませていたのかもしれない。

この作品が少し滑稽に見えるのは、そんな時代の空気感と現在との微妙なずれによるものなのか。

局の人に、 「今度番組のファンの集いがあるからきなよ」 と言われた八並は興味半分、犯人探し半分のためこっそり「ファンの集い」の収録スタジオに身を忍ばせる。

そんななかある中卒で働いているという女子が、KK(八並のこと)を勇気ある人間だと褒めちぎり、DJは、 「もしこの場所に彼女がいるなら、思い切って名乗り出てくれないかな」 と言い出し、場内は異様に張りつめた空気になる。

そんななか完全に場の空気を読めないフライング気味の篠田三郎は、スタジオに八並の姿を発見し、 「あっ!◯◯君(八並のこと)じゃないか!どうして君がこんなところに!」 とバカでかい声で言ったから大変。

場内はKKがついに現れたとパニック状態になり、みんなして八並の周りに群れなす始末。

「ファンの集い」からの帰り道、八並と篠田三郎、そして源三郎一派が街を抜けていると源三郎がおもむろにこう言う。

「彼女を見世物にした始末をどうつけるんだよ?」

実家が肉屋の篠田三郎は、みんなの見ている前で指をミンチマシーンに突っ込むというフライング気味というよりも、完全にレッドカード一発退場級の落とし前をつけたのであった。

なにかにつけ篠田三郎と張り合う源三郎であるが、その張り合う理由が八並が処女か否かで、しかもそれに二人して命を賭けているというのが、少々というかだいぶ理解できないのだが、源三郎のキャラというのはワルというよりも、ひねたやつという感じがぴったりくる。

もともともらいっ子で育ての親に溺愛され、何をしてもしかられないということに対してむしゃくしゃしていて、親父は警察署長、少しぐらいの悪さをしてももみ消されるという自分の境遇にすねている。

そんな自分の話を深夜放送に投書するのだが、 「DJのやつ肝心なところはカットしやがって~」 とDJにもすねている。

八並のキャラはというと、友人は一人も作らず勉強のみに打ち込むタイプなのだが、彼女が心を閉ざしているのには理由があった。

高校一年の時に友達と信州へ行き、一人で露天風呂に入っていたら、ヨッパライのおっさんが乱入してきて無理矢理に暴行を受け、それ以来男性不信、人間不信に陥っているのだった。

そんな八並は放送部の部員で、昼休みにはクラッシックをかけるのが常である。

で、そんな主役の八並映子であるが、露出度が高いというか脱ぎっぷりがいい。パンチラもまったく意に介さないようであるし、パイオツのほうも惜しげもなくさらす。そんな度胸が買われてか、大映倒産後は東映製作、伝説のお色気アクションドラマ「プレイガール」に合流。

犯人を探し当てるため放送局にたびたび出入りしていた八並は、同じく放送局に出入りしている源三郎に、 「面白いところがあるからよ。つき合いなよ」 と車に乗せられゴーゴークラブに連れて行かれる。

彼女はそこで初めて同年代の若者が、酒をくらいながら、激しいビートに身を委ねて踊り狂う様を目撃したのであった。

そしてそこで深夜放送に「午前0時のロック」という曲をリクエストしたのをきっかけにクラスの源三郎一派が集合するということも知ったのだった。

勢いに乗った源三郎一派は、そのまま八並を拉致するようにあるマンションの一室になだれ込み、そのまま乱交パーティーが展開される。

八並を犯す源三郎。八並は抵抗するものの、種馬のような源三郎に身を委ねるしかなかった。ここからの展開がかなり飛んでいる。

「わたし、処女じゃなかったでしょ?」

「いや。処女だったよ」

「えっ!だってわたしあの温泉で無理矢理犯されて・・・」

「それは君の思い過ごしだったんだな。気絶していた間に少しいたずらされただけだったんだよ」

と源三郎は一度寝ただけなのに、さも見てきたようなことを言うのである。劇中、このような源三郎のズレているというか、訳分んない発言が随所にあり、その度に客席から笑いが起こっていた。

しかもそれに八並がうなずき、

「そう。じゃあこれでやっと重荷から解放されたのね。もうわたし一人じゃないのね」

と女の幸せを感じたと思った瞬間に源三郎が、

「変な勘違いされちゃ困るぜ。俺たちにはセックスする時ルールがあるのさ。なにがあっても責任は女が取る。その代わり報酬は男が払うぜ」

と言って、八並のブラジャーにくしゃくしゃの五百円札をねじ込んだのであった。

「わたしの処女の価値が五百円・・・」

瞳に涙をうるませて、五百円札を見つめる八並。あとは人が変わったようにズベ公への路を雪崩式に転がり落ちるしかなかった。

夜な夜な遊びまくり、昼休みの放送部では大音量でゴーゴーをかける始末。もはや真犯人探しなど、彼女にとってはどうでもいいことになっているのであった。

そんな様子を見ていた篠田三郎は、

「君最近様子が変だぞ。なんかあったのか?」

と八並の変貌ぶりに気を使う。しかしそんな篠田三郎を逆に八並はラブホテルに連れ込み、

「どうしたの?わたしを抱く勇気もないの?」

と、男だったらケツの穴が縮むような言葉を吐く。意を決し八並と寝た篠田三郎は、てっきり八並の処女は俺がいただいたと思い込んでいたのだが、八並の思わぬ告白に衝撃を受け、源三郎のことをボコボコにしてやろうと校舎の裏に呼び出す。

篠田三郎にぶん殴られ鼻血を流す源三郎。

「二人ともやめてよー!」

の声に、

「君は黙っていろ!もう問題は二人のものなんだ!」

と息巻く篠田三郎。

「ふふふ。勉強も優秀。スポーツも万能。そんなお前さんとまともにやりあったんじゃ勝てやしねえ。どうだい賭けをしないか?」

「よかろう」

「ふふふ。こりゃ俺かお前さんの家かどちらかが葬式を出すことになりそうだぜ」

の台詞には爆笑した。

賭けというのは、源三郎の子分の親父が土建屋をやっていて、その子分にダイナマイトをパクってこさせ、二人がそれぞれダイナマイトに火をつけて、ヤバいと思ったところでそれを消化液に投げ込むというチキンレースをするものだった。

手に汗握る賭けが始まった。一回目の勝負は導火線が同じ長さ残っていてドロー。こうなったら二人同時に意地の張り合いだと、再び導火線に火をつける。火花を挙げて燃え上がっていく導火線。そんななか源三郎一派の女が、

「あの投書はあんたの名前を使って、あたいらが作ったものだったんだよー!」

と今更どうでもいいことを、どさくさまぎれに言い放つ。

ギリギリのところでダイナマイトを投げ捨てる二人。夜の空き地にドーンとマイトが爆発する。伏せている二人。

「ククク。どうやら俺たち生きているようだな」

薄笑いを浮かべて、そう言った源三郎。というところでエンドマーク。

今まで見た大映のこの手の映画では一番モンド感が強い作品だったが、確かにこんな映画ばかり作っていたら倒産もするわ、と思った。

B級映画ファンにはそこがたまらないところでもあるのだが。

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