海女の戦慄
またしても新東宝の映画を見てしまった。かく言う俺も好事家の一人なのだろうか。
その映画『海女の戦慄』(1957年公開)のタイトルバックで、主演女優の前田通子は、海女の姿をして、手ブラを披露する。
終戦から十二年経っているとはいえ、エロの情報が極端に少なかった時代故に、これだけでも十分に男の本能を掻き立てるものがあっただろう。
『海女の戦慄』は新東宝が手がけた「海女シリーズ」の第一作であるらしい。続く『女眞珠 王の復讐』は引き続き前田通子を主演に据えたもので、そこで彼女は日本映画初となるフルヌードを披露した。
と言っても、前田通子が磯で後ろ向きになっているのを、望遠で撮っているぐらいのものだったのだが、それでも彼女は日本初のフルヌード女優として、邦画史に名前が刻まれることになった。
これは新東宝の映画に関する文章を書いている度に記していることだと思うが、当時の新東宝社長、大蔵貢は元々無声映画の活弁士あがりで、映画に芸術性や文芸性などいらないとばかりに、エロス、グロテスク、サスペンス、ホラーをミックスした、今から考えればキッチュでモンドな映画ばかりを製作していた。
そのセクシー路線の中心に位置づけたのが、「海女シリーズ」であったのだろう。だが、現代人の感覚からすると海女=セクシーという図式は、なかなかに思い浮かばないのであるが、現代のようにスマホをいじくれば、即エロい情報に繋がれる時代ではなかった頃に、海女の姿というのは、比較的露出が多めで、男の助平心を刺激するものがあったのかもしれない。
しかも、時代は50年代。今のように海女の高齢化や後継者不足と言った問題もなく、全国各地の沿岸部には、若い娘盛りの海女たちが漁を繰り広げていた。
と前置きが長くなってしまったが、この作品の主人公、前田通子がいつものように磯で漁をしていると、お洒落にめかした妹、三ツ矢歌子と、その友人の万里昌代(この頃は万里昌子という名前であったようだ)が現れ、これから東京に行ってくると言う。
聞けば一泊の予定であると言うから、その頃の交通事情などを考えると、この作品で描かれている漁村は房総半島あたりなのかもしれない。
「気をつけて行ってくるんだよー」
「大丈夫よ。わたし、銀座だって新宿だって一人で歩けるんですもの」
そう言うと三ツ矢と万里は、ボンネットバスに乗って、村をあとにした。
村にはいかり亭と言う名の酒場兼、ホテルがあった。
このいかり亭の存在がなかなかに面白い。基本的に船の船員が集まる酒場なのであるが、居酒屋とは違い女給、今で言うならホステスが男の相手をしてくれるのだ。
つまり感じとしては、戦前のカフェーに近い。
さらに船員がいると言うことは、この村には港もあると言うことだろう。
そんないかり亭の前にある日、高級外車が停まり、その中からスーツを着た紳士風の男たちが降りてきた。そのまま男たちはいかり亭に入ると、ホテルに泊まりたいと言う。
「はあ。では、こちらの二階に最上級の部屋を用意してございますので、どうぞこちらへ」
いかり亭の亭主は、そういうと男たちを部屋へと案内した。
階下に降りてきた亭主と店の客たちは、声を忍ばせて話し合う。
「あの人たちどっから来たんだろな」
「バカ。あの格好は東京の人たちに決まっているだろ」
「あの背の高いヒゲの人は社長。もう一人は秘書。もう一人は鞄持ちと言ったところだな」
「何をしにこんなところまできたのかしら」
「恐らく商談やなんかじゃないかと思うがな」
今から考えてみると、酒場にホテルがあるというのも不思議な気がするのだが、船員が下船した時に泊まれるホテルというのが、この時代にはあって、それは大体酒場も兼ねていたのかもしれない。
東京に行った三ツ矢と万里であるが、一泊のはずであったのに、すでに五日は村に帰ってこないと言った状況であった。
三ツ矢には恋人がいた。いかり亭で料理人をしている男で、男は前田通子の相談を受けて、東京の警視庁に連絡をしてみると言った。
前田通子には三ツ矢の他に、まだ小さな弟がいた。弟は三ツ矢のことを、小さい姉ちゃんと呼んでおり、その小さい姉ちゃんが帰ってこないことを心配していた。
その夜のいかり亭は荒れた。鬼の岩さんと異名を取る男が、酔いに任せて女給に絡む、止めようとする男たちを払いのけるで、大虎になっていたのだ。
そんな嵐のようないかり亭に颯爽と入ってくる男が一人。
だが、俺はその男の姿を見た時、爆笑してしまった。自分は曲がりなりにも、漫画家の末席を汚している男である。その自分の漫画のアイデアとして持っているキャラクターと、いかり亭に入ってきた男とが、94%の確率で一致していたから爆笑してしまったのだ。
しかし、1957年において、その男はむしろかっこいい、男前でイカしているスタイルを決めていたのだろう。要約すれば、これぞマドロスと言った格好をしている。
船員帽子にストライプのシャツ。そして、マドロスが背負っていたサンドバッグのようなバッグを持っている(例を挙げると明日のジョーが持っていたバッグ)。
This Is マドロス。Perfect マドロス。Mr.マドロス。100%マドロス。
でも、である。そもそもマドロスとは、なんなのか。何語の言葉なのか。よく聞く言葉に「マドロス歌謡」というものがある。例えば、美空ひばりの「港町十三番地」。あの曲の発表が1958年なので、世の中はまさにマドロスブームに沸いていたのだろう。
その中で描かれているマドロスは、港、港に女を置いて、気ままに船に乗り続ける男と言った具合だ。
さらに、この作品で100%マドロスを演じる天城竜太郎という俳優がいい。天城については何も知らない。この作品で彼の存在を初めて知ったぐらいだ。
だが、その天城。いかにも往年の白塗りの美男子と言った感じの相貌がいい。さらに胴長短足という、昔の日本人の典型的体形をしているのがいい。
日本人の体形も約70年前に比べると変わったものだと思うのだが、そんな天城がマドロスを決めて、作品に颯爽と登場してきた時、俺は爆笑という感情表現を禁じ得なかった。
それで、その天城。いかり亭で暴れる岩さんの肩を叩いて、
「君。乱暴なことをするのはやめたまえよ」
と涼しい顔をして言ったから、さらにいい。
だがもう頭にきちゃったのが岩さんであった。
「なんだあ!てめえは!」
「僕はあてのない風来坊だよ」
「この野郎!俺を舐めているのか!」
「舐めてなんてないよ。とにかく乱暴はやめたまえよ」
その天城の口振りに、岩さんの頭にその血液は、毎秒一リットルぐらいの速度で上がり続けたのであるが、店の亭主がケンカをするなら表でやれの声に、天城は外に出ていく、それを追う興奮した岩さん。
「兄貴―っ!やめておけよーっ!」
そう言って岩さんを追う、その子分。
いかり亭の中にいた客たちも、ことがどうなるのかと思い全員外に出ていく。だが、そこでももうエキサイトしちゃっている岩さんとは裏腹に、天城は涼しい顔をかましている。
岩さんが繰り出す拳、蹴りを天城はダンスを踊るようにかわしていく。そして結果、岩さんは海に落ち、その岩さんを助けようとした子分も、また海に落ちていった。
「じゃあ。僕は失敬するよ」
そう言うとマドロス天城は、夜の闇の中に消えていった。
しかし、この鬼の岩さん。どこかで見たことがある顔だなと思い、頭の中の記憶を手繰り寄せてみると、前記した『女眞珠王の復讐』にて、やはり主演の前田通子が、南の島に流れ着いた時、そのえげつない、いや「いい顔」をさらして、前田通子を犯そうとした俳優であったことを思い出したのだ。
思い出したと言えばマドロス天城なのであるが、やはり今の時代、大抵のことはググれば分かるものである。そこで天城竜太郎とワードを入れて検索してみたところ、重大な事実が判明した。
実は天城は若杉英二という名前でも俳優として活動していたのだ。この若杉英二が自分の中で重大すぎるくらいの記憶に残る俳優であるのだ。
時は1969年。まさに前人未到過ぎる映画が公開された。それが『異常性愛記録 ハレンチ』だ。この作品で天城、おっと若杉は主演を張ったのであるが、その役「深畑」が凄すぎた。この男が異常すぎる変態で、ハイヒールにワインを注いで飲んだり、ゲイボーイを漁ったり、愛人のことをトイレの中までつけまわしたり、浴槽にその愛人の頭を沈めたり、彼女に自分の子ができたことを知ると、植物人間のように冷たい態度になってみたりするのだ。
この作品を監督したのが、King Of Cult。日本映画の裏天皇と称される石井輝男だ。この頃、東映、そして石井輝男は「異常性愛路線」なるシリーズを繰り広げていて、石井輝男は元々新東宝の出身であるため、同じく新東宝出身の俳優である若杉を起用したのかもしれない。
しかし、60年代も後半になると、白塗りの美男子の時代は過去のものとなり、俳優若杉の人気も凋落。落ち目の三度笠を決め込んでいたようだ。
そこに舞い込んできた主演の話である。もう若杉は石井輝男に、なんでもやりますから、と主演を懇願したらしい。しかし、そのなんでもやるが凄すぎた。
俺の弟は『異常性愛記録 ハレンチ』を見た感想をこう言った。
「俺。なに見てんだろう」
それぐらい同作品の中の若杉は凄かった。そんな若杉の演技に石井輝男は、
「俳優って言うのは、なんでもやるから怖いですねー」
と言ったのであるが、それやらせたのあんただろとも言いたくなる。
1957年の颯爽、白塗りの美男子マドロスが、12年後に世紀の大変態を演じるとは本人も予想していなかただろうし、『ハレンチ』の中には涼しい顔をして、悪漢を退治する男の面影は微塵もなかったのである。
話をストーリーに戻そう。
次の日の朝、村の男が磯に行ってみると、溺死体が浮かんでいたので、村の者たちは大騒ぎになったが、その溺死体の身元は万里昌代であった。
磯で前田通子の弟が一人いるところに、天城が現れた。
「おじさんどっから来たんだい」
「おじさんは風来坊だよ」
「風来坊?」
「それよりボク。今朝あがった溺死体のことを知っているかい」
「うん。あの人は小さい姉ちゃんの友達で、東京に行ったんだよ」
「東京に?」
「うん。海女だから、あんなところで溺れるはずないんだよ。オイラだって、あそこで泳げるもん」
「あの人は海女だったんだね」
「そうだよ。あの人と一緒に東京に行った小さい姉ちゃんが、ずっと帰ってこないんだよ。おじさん。探しておくれよ」
実はその磯には洞窟に続く穴があった。そして、その洞窟の中には、ある父と娘が閉じ込められていた。そして、この二人を監禁しているのが、例のスーツを着た一団だった。
なぜこの二人が監禁されているのかと言うと、父は旧日本海軍の艦長で、その船には戦時中、民間から徴収した宝が積まれていたのだが、嵐によって船は難破し、この村の沖合の海に沈んだ。
一団は父を拉致し、この洞窟に連れてきて船が沈んだ場所を聞き出そうとしたが、父がそれを拒絶したために、今度はその娘までも誘拐し、なおも父に船のありかを聞き出そうとしていたのだ。
スーツを着たリーダーと思しき男が、アロハシャツを着た子分の男に、二人を見張っていろと命令をして、自身は洞窟から消えて行った。
すると子分は、娘に近づくと、
「えっへへ。いいたましているじゃねえかよ。かわいがってやるよ」
と蛇のように言った。
「やめろー!娘に触るんじゃない!」
と父親は言ったが、父も娘も身体をロープで縛られているので、身動きができない。するとスーツのリーダーが帰ってきて、子分の頭を殴った。
「こんなことじゃないかと思って戻ってきたんだ!真面目にやれ!」
子分は目玉を喰らったわけであるが、この子分と言うキャラクターも1957年を象徴しているとも言えよう。「とっぽい」と言う言葉がある。すでに死語なのであるかもしれないが、キザなとか、不良っぽい、スカしている、生意気などの意味合いを兼ねている言葉なのであるが、この子分がまさに「とっぽい」男なのだ。
当時流行っていたのであろうアロハシャツを着て、髪はポマードでなでつけてある。そんなファッションで決めた痩せぎしの男が、まさに蛇のように物語に絡みついてくるのだ。
天城は弟の案内で、洞窟へと続く穴の入り口にやってきた。
「オイラ。ここは村のみんなが幽霊が出るって言うから、入るのは嫌だよー」
そう言うと弟は帰ってしまった。穴へと入って行く天城。するといかにも作り物のコウモリが飛んでくる。なおも天城が進んで行った時、地面にタバコの吸い殻と、折れたマッチが落ちているのが目に入ってきた。
天城の頭の中に思い浮かぶ記憶。それは天城が、いかり亭にいた時だ。隣のカウンターで飲んでいるとっぽいヤツが、確かにタバコに火をつけて、擦ったマッチを二つに折ったのだ。
それでもなぜか天城は洞窟の内部へと歩を進めず、そのままきびすを返し帰っていった。
その頃、村の沖合の船上では例の一団が誘拐してきた三ツ矢歌子に、海に潜って沈没した船のありかを探してこいと脅していた。
「いやです。ここは魔の海と呼ばれているんです。帰らせてください」
「これじゃあ潜水士でも呼んできたほうが、手っ取り早かったぜ」
そうとっぽいヤツは言った。
「馬鹿野郎!ことを荒立てちゃいけねえんだ!」
スーツのリーダーはそう言ったが、俺もとっぽいヤツの言う通りだと思った。さらにとっぽいヤツは、三ツ矢に対していやらしい目線を送ったので、またリーダーに頭を殴られた。
するとおもむろに回想シーンが始まる。
船上で万里昌代が脅されている。
「海に潜って船のありかを教えるんだ」
とリーダー。
「誰があんたたちのために、海に潜るもんか!」
「なにをこのアマ!」
そう言ってとっぽいヤツが万里を殴りつけると、万里は舟の床に頭を打ち、そのまま死んでしまった。結果、とっぽいヤツはリーダーから、めちゃくちゃドヤしつけられた。だが、この時の万里昌代の死に顔は、素晴らしかったと記しておこう。
こうして見てくると、三ツ矢歌子と万里昌代の二人の対比というものが見えてくる。あくまで清純な三ツ矢歌子に対して、万里昌代は「死に顔」が素晴らしい女優なのだ。
以後も万里昌代は新東宝が倒産する1961年まで、その作品に出演し続けた訳であるが、同じく新東宝の看板女優であった三原葉子が、元祖ヴァンプ女優であったのに対して、万里昌代は元祖ビッチ女優であったということが言えるだろう。
そうこうしていると、時制は現在に戻り、一隻の船が近づいてくるのが見える。
「あっ。保安庁の船ですぜ」
「まずい。洞窟に戻るんだ」
一団を乗せている漁船は、漁船と言っても江戸時代の漁船に、ボロいエンジンを積んでいるようなものである。
ヤツらは磯に戻ると、そのまま三ツ矢歌子を洞窟の中に連れ込んで行こうとする。それを目撃したのが弟であった。
「あっ!小さい姉ちゃん!」
「健一!健一!この人たち悪い人たちなのよ!」
「あのガキも一緒に連れてこい!」
結果的に弟も三ツ矢も一緒に洞窟に連れて行かれることになった。この時のカメラワークに注目したい。当然、三ツ矢は海女の格好をしている。そして、洞窟には先に艦長の娘がいる。そしてカメラは三ツ矢、娘それぞれを足からなめて、上半身、さらに顔を映し出すのだ。
これは明らかに二人をセクシーに見せるためのもので、男の興奮を誘う効果を狙ったものであったのだろう。
夜になっても弟が帰ってこないので、前田通子は心配になり、村の駐在警察官に相談しに行った。そして、村の者総出で磯を探し回ったのであるが、時代が時代、みなは懐中電灯やライトではなく、松明を掲げて磯を探し回る。
「健ちゃーん!」
「健一!」
「おーい!健坊!」
その中には三ツ矢の恋人もいたし、天城もいた。
次の日、鬼の岩さんは天城に仕返しをするんだと言って、村中を歩き回り天城を探していた。
「昨日は酒飲んで酔っていたからな。きょうはシラフだ。負ける訳ねえんだ」
「兄貴―っ。もうやめておけよーっ」
岩さんは海女たちが休憩している場所にやってきた。
「おめえたち!あの男を知らねえか!」
「今、ラブシーンなのよ」
「ラブシーン?」
見ると天城と前田通子は、堤防で一緒に座っていた。前田通子が天城に語って聞かせる。
「岩さんって確かに乱暴な人かもしれないんですけど、本当は心根の優しいいい人なんですよ」
その声を聞くと岩さんは、顔をほころばせた。
弟はとっぽいヤツが居眠りをしているうちに、洞窟から脱出することに成功した。弟が磯に出てみると、そこに前田通子がいた。
「あっ!姉ちゃん!」
「健一!」
二人が抱き合ったのも束の間。あの蛇のような男が追いかけてきた。
「動くんじゃねえ!」
ヤツはピストルを握っていた。結果、前田通子も囚われの身になり、弟、三ツ矢歌子、父、娘と一緒に舟に乗せられ、沖合に連れて行かれた。
「海に潜って宝を探してくるんだ!そうしねえと、こいつらの命はねえぞ!」
リーダーは弟や三ツ矢たちに、ピストルを向けた。前田通子は奴らの命令に従うしかなかった。その水底に身を沈める前田通子。
しかし、この水中シーンがなんとも言い難い。当然、前田通子が潜っているのは海なのであるが、そこに泳いでいるのは、淡水魚の鯉なのである。当時の撮影技術と言えば、それまでのことなのであるが。これにはいかんとも言えないものを感じた。
さらにカメラは平泳ぎしている前田通子を後ろから映し出す。彼女の股が開いて見えるのであるが、そこにもなんとかセクシー度を上げようとする製作陣の思いを感じた。
前田通子が海底に辿り着くと、そこに沈んでいる船を発見した。そして、その内部で彼女は宝が入っていると思しき箱を見つけたのだ。彼女は、その箱をロープで結ぶと、そのロープを引っ張り、一団に合図を出した。
「おっ!合図だ!引っ張り上げてみろ!」
ヤツらがロープを手繰り寄せると、そこにはお宝箱が結んであり、それを開けてみると、やはり宝石や金貨、銀貨が出てきた。
「お姉ちゃん。大丈夫かい」
船上に戻ってくる前田通子。だがヤツらはそのことにも気づかず、財宝を手に入れた喜びに沸いていた。だが、そこに白波を蹴って一艘の船が近づいてくる。
「あっ!保安庁の船だ!」
「早くエンジンをかけるんだ!」
水面を切り始める一団の舟。海上保安庁の船との追跡が始まる。その船に向かって一団は、ピストルを発射し始める。撃ち返す海上保安員。その中にマドロス天城もいる。
最終的に一団の人間は一人、また一人と倒され、保安員がその舟に乗り込み捕まるのであるが、そのリーダーがマシンガンを持っていて、それを撃ちはじめた時、なぜか笑うのを禁じ得ない自分がいた。
村のバス停。そこには前田通子姉弟。そして三ツ矢の恋人。さらに岩さんがいた。
「今まで黙っていてすいません。僕は海上保安庁の職員だったんですよ」
そうスーツ姿の天城が言う。
「この村には必ず帰ってきますから。その時には、お二人は結婚しているかな」
照れる三ツ矢とその恋人。そこにボンネットバスがやってくる。
「じゃあ、みなさんお元気で」
バスに乗り込む天城に、前田通子は恋慕の視線を送ったが、その天城がこの十二年後に、世紀の大変態を演じると言うことは、彼女どころか、当の天城本人も知る由がなかっただろう。
大変態。若杉英二、おっと天城竜太郎の過去を知ることができただけでも、御の字とする映画だった。

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